小林薫 劇中で直虎、現場で座長・柴咲コウの奮闘見守り続けた1年間

[ 2017年12月10日 08:00 ]

NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で南渓和尚を演じる小林薫(C)NHK
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 12月17日の最終回まで残り2話となった女優・柴咲コウ(36)主演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」。俳優の小林薫(66)が主人公・井伊直虎の大叔父、南渓和尚を好演。劇中では直虎を、現場では柴咲の奮闘を見守り続けた。クランクアップ前に応じたインタビューで、役柄への思いや戦国時代に背負った井伊家の運命について語った。

――1年以上に及ぶ撮影が続いた大河ドラマの感想を教えてください。

 「健康を維持しながら1年間続けるのは大変だなと思いました。主役の柴咲さんはもっと大変。出演者も多く、初めて一緒に仕事させてもらう人もいましたので、凄く面白かったです」

――大河に出演して感じた面白さを教えてください。

 「南渓の身近にいる人物ですと、昊天(こうてん)を演じた小松和重くん。小劇場でずっとやっている人で、仕事の捉え方や芝居に対する取り組み方を見ていると非常に面白いなと思いました。ムロツヨシくんはセンスがいいなあと。たまに声を掛けてもらって飲みに行くことがありました。僕にはない他の方々のセンスを伺い知ることができ、刺激を受けました」

◆「碁」と似た井伊家の運命 一手で盤面、情勢が激変

――井伊家の軍師的存在であった南渓。井伊家が取り潰されるなど戦国は激動の時代でした。直虎をずっと見守り続けている南渓は、直虎をどう見ていましたか?

 「劇中、直虎と高橋一生くん演じる小野政次が碁をやるシーンが度々ありましたが、井伊家の運命も碁のようでした。碁や将棋は一手打つだけで盤面、情勢が大きく変わる。碁で周りを囲まれたように、危機を迎えた場合はどうやってすり抜けるか考える。好機をつかんだときは強気の攻めをするべきか考えていたと思います。南渓は僧侶という立場。井伊家を守るには直虎を押し立てていくしかないので、なだめたり、嘘をついたりしながら直虎を導きました。直虎自身の幸せをどうするかというよりは井伊家が優先。そういう事情で直虎を翻弄しているところもあるなと思いました」

――第36話「井伊家最後の日」では、井伊家を存続するか苦悩する直虎を抱きしめる場面がありました。あのときの南渓さんの思いは?

 「南渓は監督のような立場だったのかなと。例えばプロ野球のベテラン投手がいて、誰かが声を掛けないとマウンドを降りない感じでしょうか。投手が孤軍奮闘していたが、ある種の限界を超えていると思ったときに、監督のような立場の人がマウンドに行って声を掛けない限り、本人からは降りようとしないだろうと。そういう気持ちですね」

◆南渓は監督のような立場“先発投手、救援は誰に…”家存続のために苦心

――井伊家の嫡男で、家の再興を託された虎松。菅田将暉さん演じる虎松に対して、南渓和尚が井伊家再興を焚き付けるような場面がありました。

 「台本を読んでいると、そういう感じになっていました。おとわ(直虎の幼年期)もそうだったのですが、この子は自ら運命を切り開いていくところがあると感じた。同じような子を見ていて井伊家を託そうという気持ちが働いていて、虎松を見たときも勝ち気な性格を見て、南渓としては“本人が井伊家を再興したいと言っている”と焚き付けていきますね(笑)。南渓の本音なのでしょう。武勲の一つでも立ててくれたら、家の再興もあり得るのではないかと。井伊家ありきで考えていると思います。そのために、どの投手を上げたらいいか、救援で誰にして抑えを誰にするのがいいのかというような。利用するという言葉はおかしいですが、当時はせわしなく地図が塗り替えられる時代でしたので。安定した時代であれば違ったと思います。戦国時代に井伊家がどう生きるか。振り返ってみると、南渓の言っていることは結構矛盾していますが(笑)、まずは井伊家ありき。家が解体してしまうときに、井伊家の人々をどうするかは苦心したと思います」

――虎松を演じた菅田さんの印象を教えてください。

 「菅田くんとは過去に2回共演しました。非常にシャープな人。線が細いけど、リハーサルになると太いというかパワーがある。“なるほどなあ”って驚いたことがあります。井伊をどうしたいかと議論で熱くなり、直虎と喧嘩するシーンがあったのですが、このときも柴咲さん演じる直虎に負けてないなと。強気なことが表現できる役者さんとして起用したのだなと思います」

――長丁場の1年間。柴咲さんは座長としてどう変わっていったか、身近で見ていてどう感じられましたか?

 「凄く変わりましたね。最初は必要以上にプレッシャーを背負っていたと思います。力も相当入っていたんじゃないかな。撮影の中盤、終盤には力がうまく抜けていったと思います。野球の試合でどんなにいい投手でも、初回に力んでしまうと点を取られるじゃないですか。演技の加減を知っている実力派でも大河ドラマの初回に登板して、どのくらいの力加減で試合に入っていったらいいのか、自分がどういう風に引っ張っていけばいいかは手探りでやっていくしかなかったと思います」

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2017年12月10日のニュース