「小林賢太郎テレビ9」進化 コントの作り方に変化「新しい小林賢太郎が感じられる」

[ 2017年12月10日 11:00 ]

演出・小澤寛ディレクターに聞く(上)

BSプレミアム「小林賢太郎テレビ9」に出演するラーメンズの小林賢太郎(C)NHK
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 舞台を拠点に活動し、新しい形の笑いを追求しているカリスマコント師、お笑いグループ「ラーメンズ」の小林賢太郎(44)が年に1回、テレビで新作コントを発表してきた「小林賢太郎テレビ」。その第9弾「小林賢太郎テレビ9 裏と表」が10日午後10時50分からNHK BSプレミアムで放送される。第1弾(2009年)から番組の演出を手掛けるNHKエンタープライズの小澤寛ディレクターが見どころを明かした。

 例年6月の放送だったが、小林が昨年立ち上げたコント集団「KAJALLA(カジャラ)」の第2回公演「裸の王様」が今年3〜5月に上演され、その後もパリ・ロンドンと海外公演が続いたため、9月から制作に入り、10月に撮影。「今年の放送は?」とヤキモキしたファンも多かったかもしれないが、小澤氏によると、単純にスケジュールの都合だった。

 「9」の話に入る前に、昨年6月26日に放送された第8弾を振り返る必要がある。というのも「8」は小林の相方・片桐仁(44)が番組初登場し、09年のラーメンズ第17回公演「TOWER」以来7年ぶりの共演が大きな話題に。番組としても“節目”の回になったからだ。

 「小林賢太郎テレビ」は第5弾(13年)、第6弾(14年)、第7弾(15年)とミニドラマ4本を軸にストーリーを展開し、その合間にさまざまなコントが入る構成を確立。ドラマ部分は「5」の「マルポ便」に大泉洋(44)、「6」の「なぞなぞ庭師」に松重豊(54)、「7」の「連続テレビ文庫 エンヤートット」に上野樹里(31)をゲストに招いてきた。

 「ドラマ+コント」の“勝利の方程式”は番組の完成形と思われたが、第8弾は「その方程式を1回捨てたことが、『8』の最大のチャレンジ。ドラマとコントが厳密に分けられない。『8』は番組全部が1つのストーリーになっています。ドラマのようでもあり、コントのようでもある。言ってみれば『ドラマ×コント』。足していたものを掛けてみた。今まで7回やってきた試行錯誤の結果が、この『8』に全部出た集大成になっていると思います」(小澤ディレクター)。高みに到達した第8弾を経て、「9」はどんな作品に仕上がったのか。

 今回のゲストは、小林の演劇プロジェクト「K.K.P」の第4弾「LENS」(04年)にも出演した“盟友”大森南朋(45)。壇蜜(37)、北海道発の人気バラエティー番組「水曜どうでしょう」の“ミスター”こと鈴井貴之(55)。大森と壇蜜はドラマ部分に、鈴井は番組恒例「お題コント」の出題者として登場。小林の世界観に不可欠な、舞台を中心に活躍している個性派俳優の面々、竹井亮介(45)辻本耕志(40)安井順平(43)久ヶ沢徹(55)菅原永二(43)伊勢佳世(36)嶋村太一(44)犬山イヌコも出演。番組史上最多キャストとなった。

 小澤氏も「『8』は放送後に『最終回なんじゃないか』というような声があったぐらい、確かに1つ、集大成感はありました」と振り返りながら、今作については「一見、前の『ドラマ+コント』の形に戻ったように見えますが、ドラマの物語性やコントの質、中身の密度が一気に上がり、従来よりエッジが立った作りになっているのが特徴」と切り出した。

 それは、小林のコントの作り方が変化したことによる。「彼の中のことなので、どこまで伝わるか分からないですが、今までは比較的ギューッと考えて、シミュレーションし、積み重ねるという作り方が多かったと思います。それが、今回は肩の力を抜いて自然と湧き出てくるものを待つ。その代わり、絶えず頭の中で考え続けないといけないらしいんですが、そうして生まれたネタは今までよりも“ボケが強い”と言いますか。この20年は修行のように自分を追い込む作り方だったのが、今回は、そのストックや経験を踏まえながら、本人いわく『自然と(発想、ネタを)つかまえられるようになった』と。作り方が変わったので、必然的にコントの質も随分、変わったと思います。もちろん、従来通り、よく計算されたコントなのですが、今回は“最初の一手がもう強い”と感じました」

 同時に、コント集団「KAJALLA」を立ち上げた影響も表れた。「この番組は、小林賢太郎という人のドキュメンタリーでもあると思っているんですが、彼がラーメンズ、ソロパフォーマンス『Potsunen(ポツネン)』を経て、今後、長いスパンで大好きなコントを続けるために何が一番いい方法かを考えた結果、生まれたのが『KAJALLA』。そういう彼の考え方、年齢を重ねるにつれての取り組み方も透けて見える番組になっていると思いますし、彼の新しいステージ、つまりコント集団が反映された第一歩の番組になったと思います」。だから、今回の「小林賢太郎テレビ9」には「KAJALLA」の共演者(竹井、安井、辻本、久ヶ沢、菅原)が勢揃い。今年3〜5月に上演された第2回公演「裸の王様」が来週17日午後10時50分からNHK BSプレミアムでテレビ初オンエアされるとあり、見比べを楽しめる関連性のあるコントも作られた。

 小澤ディレクターは「今回も、さまざまな種類のコントを作りました。彼の作り方が変化し『そのボケって、今までと全く違う次元に行ったね』いうものもあれば、彼が一歩下がり『KAJALLA』の信頼する仲間を前に出す従来とは少し違うフォーメーションのものもあり、視聴者の皆さんには、いろいろな楽しみ方をしていただきたいです。前回の『8』は片桐さんも出演していただき、シリーズ全体を通して1個『。』が付いた回。『9』は新しい小林賢太郎というものが一番感じられる作品になっているんじゃないかと思います。同時に彼の今後の活動、笑いの方向性も見えると言っても過言じゃありません。『8』と『9』の間には、大きくドンと間仕切りが入っていると思います」と総括。集大成になった第8弾から、第9弾はさらに進化。 小林の新境地が詰まっている。

 来年は区切りの10作目。「テレビの人間は5とか10とかの数字に弱いじゃないですか。スキあれば、お祭り騒ぎにしたい、話題を呼びたい。でも小林さんにとって大事なのは、どんな時も目の前にある作品。それがいいものであることかどうかだけ。だから、区切りだからこういうことしましょう、ということには、あまり興味がないかもしれません。ただ、個人的には、この番組を10年前に始めた時『10作目まではやるぞ』と心に決めて1つの目標にしてきたので、本音を言えば何かしら特別なことをしたいですね。まずは、彼とお酒を飲みながら相談でしょうか」と笑い、次回作を見据えた。

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