「つかこうへい最後の愛弟子」馬場徹“恩師”に感謝「自分を変えてくれた」

[ 2017年10月29日 08:00 ]

馬場徹インタビュー(下)

日曜劇場「陸王」の“悪役”が反響を呼んでいる馬場徹(C)TBS
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 010年に亡くなった劇作家・演出家つかこうへい氏の「最後の愛弟子」と呼ばれる若手実力派俳優の馬場徹(29)がTBS日曜劇場「陸王」(日曜後9・00)にレギュラー出演。主人公の敵役を好演し、その憎たらしさが反響を呼んでいる。セリフを言うスピードは「体感だと、普段の1・5倍くらい速いんじゃないですかね」と細部に工夫を凝らす。“悪役”は舞台で経験済みだが、テレビドラマは自身初。新境地開拓に手応えを感じている。

 3歳からサッカー少年だった一方、洋画好きの子供だった。字幕の意味はあまり分からずとも、父親に「交渉人」「パール・ハーバー」などの作品に連れて行ってもらった。小学4年の時に大ケガを負い、自宅療養。「学校にもなかなか行けず、やることもなかったので」映画を1日3本、見ることも。「もし自分がスクリーンの中にいたとしたら…」。俳優を志す第一歩になった。

 小学6年の時、劇団ひまわりに入り、演技の仕事を開始。その後、2006年、18歳の時、ミュージカル「テニスの王子様」で初舞台。そして10年、舞台「飛龍伝2010 ラストプリンセス」のオーディションで、「熱海殺人事件」「蒲田行進曲」などの数々の名作を生んだ、つか氏の門を叩いた。

 「当時、同世代の若い人たちとよく一緒に仕事をしていました。それもいいことなんですが、それだけを続けてしまうと、若い考えのまま年だけ取っていって、たぶん自分は変われない。いろいろな人とセッションをして、自分を変えなきゃと思っていた時、ちょうど、つかさんの舞台のオーディションがあったんです。つかさんからひたすらセリフを読まされた後、紙を置け、と。最後は口立て(つか氏が脚本なしで口頭でセリフを伝え、役者は瞬時に反応、復唱して芝居を作り上げる)をされて、その場でOKを頂きました。『おまえ、もう出ろ』みたいな感じで。その時は緊張と興奮のあまり、過呼吸になってしまうぐらいでした」

 目を見て話を聞けないぐらい、つか氏は怖かったが、逃げ出そうとはしなかった。「戦場は戦場だったんですが、ある意味、夢のある場所。役者20〜30年の先輩と、ついこの間、つかこうへい劇団に入った若い人と、年齢、経験は関係なく、その時、おもしろい表現ができれば『おもしろいじゃねぇか』と、どんどんセリフが増えたり、自分の頑張り次第で出番が増えるんです」。今も胸に刻む、つか氏の教えは<芝居しようなんて考えるな。とにかく目の前にいるヤツに自分の思いを伝えるためだけに一生懸命になれ>。「もちろん(芝居のことは)考えますが」と笑いながら「とにかく伝えたいことを相手にしっかり届けるということは、今も常に意識しています。自分を変えてくれたのは、つかさんです」と感謝した。

 今回の「陸王」の敵役は新境地。来年6月には30歳になる。今後について尋ねると「(取材日の)きょう(主演の)役所(広司)さんが傘を差して歩いていくだけのシーンがあったんですが、ものすごく背中から伝わってくるものがあって。セリフはなくとも、内からにじみ出るものを表現されている。それを目の当たりにして、表現に終わりとか限界とか、ないんだなと実感しました。まだ29の若造ですが、もっともっとそういうものをたくさん表現できる俳優になりたいと思います」と理想の役者像を描いた。

 来年1月クールはTBS「99・9―刑事専門弁護士―SEASON2」、来年3月21日にはNHK「スニッファー スペシャル」に出演。「映像も舞台もバランス良く、ご縁があれば、たくさんやりたい。枠は狭めたくないですね」。つか氏仕込みの実力の持ち主。一層、活躍の場を広げそうだ。

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