阿久悠さん没後10年で拓郎と“再コンビ”、未発表詞「この街」に曲つけ

[ 2017年10月28日 05:30 ]

阿久悠さん
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 2007年に他界した不世出の作詞家、阿久悠さん(享年70)の未発表詞「この街」が見つかり、フォーク界の大スター吉田拓郎(71)が曲をつけた。歌うのは若手No・1の実力派ボーカリスト、林部智史(29)。阿久作品を豪華アーティストがカバーした「地球の男にあきたところよ〜阿久悠リスペクト・アルバム」(来月15日発売)に収録される。

 今年はシングル6800万枚を売り上げた昭和歌謡界最大のヒットメーカーの没後10年、作詞家50年、生誕80年のメモリアルイヤー。この大きな節目に、阿久さんの未発表詞が数百編、都内の事務所から見つかった。関係者から作曲を依頼された拓郎。選んだのが「この街」だった。

 ♪この街は 眠らない もの想(おも)う 時間がない――。

 ふと気付くと、孤独と悲しみに包まれる時代。人は何を思い、何を求めているのか。阿久さんが探求し続けたこの根源的な渇望のメッセージに、拓郎はいたわるような軽快なメロディーを乗せることで“潤い”を与えた。

 2人の作詞作曲で有名なのは、石野真子「狼なんか怖くない」「わたしの首領」の大ヒット曲。小林旭「ハーモニカの詩」など、売れなかった歌もある。拓郎はスポニチ本紙の取材に「僕にとって阿久さんとの作品は全て宝物。もう一度チャンスがあったらと思っていたら旅立たれて…。それがこういう機会に恵まれて本当に幸せです」。レコーディングにも立ち会い、そこで出会った林部の才能に「衝撃を受けた」という。

 元々存在を知らなかったが、妻の女優森下愛子(59)がデビュー曲「あいたい」を絶賛していたという。自身も事前に林部の新曲「だきしめたい」を聴き「なかなかいいなあ」とは思ったそうだが「生で聴いてビックリした。ハンパじゃない。群を抜いている驚異的なボーカリスト」と絶賛。直接アドバイスするなど最後まで録音に立ち会った。

 そんな拓郎の思いに応えるように、優しく歌い上げた林部は「阿久さんの詞で、いつの時代も人間という存在ははかなく、それでいて尊い存在なんだと感じました。そこに拓郎さんの世界観が重なり、まるで元からあったかのような素敵な曲になりました。歌い方のアドバイスもしていただき、この貴重な経験を生かして成長したい」と感激しきりだった。

 《「だきしめたい」ベスト10入り》6月に発売した林部の新曲「だきしめたい」が、最新オリコン週間チャート(30日付)で4カ月ぶりにベスト10入り(10位)を果たした。有線チャートでも20週連続チャートイン中(最高1位)で、デビュー曲「あいたい」も発売から2年近くで計15万枚を突破。いずれもロングヒットとなっている。

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