篠沢教授逝く「クイズダービー」出演は学歴社会に一石投じるため

[ 2017年10月27日 06:40 ]

「クイズダービー」の出演者。司会の大橋巨泉(右端)と(左から)篠沢秀夫教授、斉藤慶子、はらたいらさん、竹下景子(TBS提供)
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 テレビ番組「クイズダービー」でも活躍したフランス文学研究者で学習院大名誉教授の篠沢秀夫(しのざわ・ひでお)さんが26日未明、東京都文京区の病院で死去した。84歳。東京都出身。葬儀・告別式の日程は未定。喪主は妻礼子(れいこ)さん(77)。ユニークなクイズの解答ぶりがお茶の間の人気で「篠沢教授」の愛称で親しまれた。近年は難病と闘っていた。

◆フランス文学研究者、難病ALS発症後も執筆続け…◆

 礼子さんによると、篠沢さんは6月に肺炎で入院。一時は医師から退院できると言われるまで回復したが、10月に入って急変。腎機能に障害が出て尿が出なくなった。その時点で医師からは1週間がヤマ場と言われていたが3週間生き続け、最後は礼子さんや子供たちに見守られて静かに旅立った。

 09年に難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され人工呼吸器を装着。除々に体が動かなくなる病にも負けず、原稿の執筆など精力的に活動していた。昨年8月から、肺炎による入院を4回繰り返した。夜も2〜3時間おきに痰(たん)の吸引が必要な介護を何年も続けてきた礼子さんは「主人は病気になったことを恨んだり、私に怒ったりが一切無く、ニコニコとしていた。最期も安らかな顔をしていました」と話した。

 篠沢さんは、学習院大から東大大学院に進学し、19世紀以降のフランス文学の文体を研究。昨年7月に他界した大橋巨泉さんが司会を務めたTBS「クイズダービー」に番組スタート翌年の77年から出演した。当時44歳だった。女優の竹下景子(64)、06年に亡くなった漫画家のはらたいらさんらと共にレギュラー解答者として活躍した。大学教授という肩書ながら、時に珍回答や大間違いも見せるおちゃめなキャラクターで笑いを誘った。「教授」という職業をお茶の間に近づけた人でもあった。

 番組を担当していた副島恒次プロデューサーは「出演の打診をしたときには“いいじゃないか。俺は学歴社会はどうかと思っている。いい見本になるのでは”と言っていた。自分が間違える姿を見せることで、一石を投じる気持ちだったのでしょう。強じんな意志と強い心臓を持った方でした」と話した。

 保守派の論客としても知られ、テレビなどでも論陣を張った。ALSの発症後は、病気を巡っての講演も熱心に行った。

 ▽筋萎縮性側索硬化症(ALS) 原因不明の神経系の病気。脳から運動を命令する運動神経系が阻害されていく。手足の筋肉の衰え、言葉や嚥下(えんげ)の障害、呼吸筋の障害など除々に全身に広がる。進行の速さは数年から10年以上と個人差がある。英の理論物理学博士、スティーブン・ホーキング氏も同じ病で闘病している。

 ◆篠沢 秀夫(しのざわ・ひでお)1933年(昭8)6月6日、東京都大田区生まれ。都立日比谷高校を卒業後、学習院大学文学部フランス文学科入学。東大大学院、パリ留学などを経て明治大や学習院大で教授を務めた。著書に「文体学の基礎」「日本国家論」。CMなどにも出演。13年瑞宝中綬章。

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