時代は巡る…RIZIN福岡大会で感じた“新しい風”

[ 2017年10月22日 10:20 ]

那須川天心
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 ボクシング、アマ5冠の天才ボクサー・藤田大和の動きに心がざわついた。“神童”と呼ばれる無敗のキックボクサー・那須川天心とのMMAデビュー戦。RIZIN福岡大会で行われたセミファイナルは、スピーディーで壮絶な展開となった。

 藤田は臆することなく強烈な蹴りを繰り出し、自らグラウンドにも引き込んだ。幼少期から空手、キックボクシングを学ぶなどステップを含めボクサーの動きではない。天心の強烈すぎるカウンターの左ストレートでダウンし、万事休すかと思われたが、最後まで粘って判定に持ち込んだ。敗れはしたものの、これまで対戦相手を叩きのめしてきた天心の実力を考えると恐るべきニューカマーだ。

 この試合はフジテレビで午後8時50分ごろから生中継され、瞬間最高視聴率10・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。裏番組はお化け番組「世界の果てまでイッテQ!」の特番と、役所広司主演で話題のTBSドラマ「陸王」だったことを考えると、大健闘したと言える。

 天心については、どこまで上り詰めるのか興味津々だ。世界戦経験のあるボクシング関係者は、「身のこなし、タイミングの取り方、スピード、センスがすごい。ボクシングのキャリアを考えると藤田とは雲泥の差。それなのに瞬間的にあのカウンターを出せるのだからボクシングでも世界を獲れる」と絶賛。別の格闘技関係者も「藤田が判定までもつれ込んだということで話題になってるけど、逆にそこまで天心が強すぎるということ。やはり突き抜けた存在」と今後に期待している。

 大会自体は、全体的にキャリアの浅い選手が多かったことが目の肥えたMMAファンにどう映ったのかという課題は残るが、生中継されたメーンのRENAも左ボディーブローによる豪快なTKO決着。16試合中KOか一本での決着は6試合で会場の満足度も高かった。

 残念だったのはフジテレビの中継である。肝心のバンタム級トーナメントについて、あまりにもおざなりな扱いだった。満を持して参戦したパンクラスのバンタム級王者・石渡伸太郎や、桜庭和志とフランク・シャムロックのグラップリング・マッチもどのような結末を迎えたのかが分からずじまい。本来ならダイジェストで流すべきで、最低でも全試合の結果は伝えるべきだろう。女子スーパーアトム級トーナメントのRENAの対戦相手の計量オーバーについても、その後の処分が気になるところだ。

 年末はUFCでも活躍した堀口恭司らが参戦するバンタム級トーナメントの決勝がある。トーナメントは61キロがリミットのため、57キロ前後で戦う天心も藤田もワンマッチでの出場が濃厚だ。藤田については、RIZIN側が才能を買って海外にMMA留学させるプランも持ち上がっている。

 1997年10月11日の「PRIDE.1」で行われた高田延彦−ヒクソン・グレイシー戦から20年経つ。藤田が偶然にも高田の入場テーマ曲「トレーニング・モンタージュ」を選んでリングインしたことにも、良い意味で心がザワめいた。時代は巡る。新しい風は確実に吹き始めている。(記者コラム)

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2017年10月22日のニュース