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芸術の秋を彩る二世たち

 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】今年もNHK音楽祭が始まった。9月9日の開幕日に東京・渋谷のNHKホールに足を運んだ。パーヴォ・ヤルヴィ(54)率いるNHK交響楽団がモーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(全2幕)を演奏会形式で披露。オープニングを飾るにふさわしいステージだった。

 イタリア語での上演。タイトルロールを演じたヴィート・プリアンテ、ドンナ・アンナ役のジョージア・ジャーマンら出演者全員が熱の入った演技を披露したが、とりわけ圧巻だったのがレポレッロを演じたカイル・ケテルセンとドンナ・エルヴィーラ役のローレン・フェイガン。カーテンコールでも一段と大きな拍手と「ブラボー!」の歓声が2人に送られた。

 マゼットに扮した久保和範とツェルリーナ役の三宅理恵も奮闘したが、共演者に比べると声量がいまひとつ。もちろん筆者個人の感想と断っておくが、肺活量や声帯の構造の違いなど、いかんともしがたい「カラダの作り」の差異を痛感させられた気がする。腹の底から出てくる声の太さ、ボリュームはどうしてもかなわない。迫真の演技は日本人として誇らしく思っただけに、その辺が少し残念に思った。

 それにしてもパーヴォはしなやかだ。演奏会形式だから指揮ぶりが丸見え。柔らかく、かつ芯がぶれない華麗なタクトにすっかり酔いしれた。エストニア出身。2年前の2015年9月にN響の初代首席指揮者に就任したが、完全にオケを掌中に入れている。最後までメリハリの効いた素晴らしい演奏を引き出した。

 父は言わずと知れたネーメ・ヤルヴィ(80)だ。エストニア放送交響楽団、エストニア国立歌劇場の音楽監督やイェーテボリ交響楽団の首席指揮者などを歴任し、日本のオーケストラにもたびたび客演してきた名指揮者。息子パーヴォの活躍を誇らしく思っているに違いない。

 2日後の9月11日には信濃町の文学座で9月アトリエの会「冒した者」を観賞した。10分間の休憩2回を含め3時間50分の大作で、無頼派として知られた三好十郎(1902〜58年)の52年の戯曲を上村聡史が演出した。

 敗戦から7年後の日本のとある町が舞台。空襲で壊れかけている屋敷に9人の男女が生活している。そこに1人の青年が訪ねてきたことから生じる波風。演出の上村は「“生きる実感”と“死への恐怖”に対して、実直に向き合い、無数にも広がる精神と肉体の可能性を攻めの姿勢で表現したい」と抱負をしたためているが、まさしくそれが役者たちの肉体を通して体現された凄まじいばかりの舞台だった。

 オフにし忘れたのだろう、クライマックス近くで客の携帯が鳴ったのが残念だったが、大滝寛、中村彰男、奥田一平、金松彩夏ら俳優たちの魂のこもった演技は圧巻。「この人、本当にプロ?」と首を傾げてしまう俳優がテレビの中などに散見される中、本物を見せてもらった感じがした。向田邦子さんの青春をモチーフにした「くにこ」にも主演していた栗田桃子も住人の1人で出演し、役と見事に同化していた。

 栗田は14年3月30日に69歳で亡くなった蟹江敬三さんの長女である。ネーメとパーヴォ親子ではないが、こちらも娘が頑張っている。天国で蟹江さんも、あのいかつい顏をにやつかせているだろう。(編集委員)

 ◆佐藤 雅昭(さとう・まさあき)北海道生まれ。1983年スポニチ入社。長く映画を担当。

[ 2017年9月20日 08:07 ]

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