「ひよっこ」急展開で最大のヤマ場!記憶喪失設定のワケ みね子“怒”有村架純が底知れぬ熱演

[ 2017年7月31日 07:00 ]

行方不明の父・実(沢村一樹)と再会したみね子(有村架純)だったが…。連続テレビ小説「ひよっこ」第102話から(C)NHK
Photo By 提供写真

 女優の有村架純(24)がヒロインを務めるNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」(月〜土曜前8・00)は31日から第18週「大丈夫、きっと」に突入。ドラマ最大のヤマ場を迎える。第17週の最後、第102話(29日放送)で、谷田部みね子(有村)の父・実(沢村一樹)が記憶喪失になっていることが判明。しかも、行方不明になっていた2年半、人気女優の川本世津子(菅野美穂)と一緒に暮らしていた。谷田部家はどうなるのか…。制作統括の菓子浩チーフプロデューサーに急展開の見どころ、撮影秘話を聞いた。

 第73話(6月26日放送)。元警察官の綿引正義(竜星涼)が地元・茨城から上京。みね子たちに、実の情報を伝えていた。綿引によると、出稼ぎで稼いだお金を家族に送金しようとしていた実は、ひったくり犯に現金を奪われた。犯人は棒切れで実を殴り、逃走。その後、怖くなった犯人は現場に戻ったが、実の姿はなかった。救急車で病院に運ばれた記録も、自ら病院に行った形跡もない。実は「これは家族のためのお金なんだ。返してくれ」と何度も口にしたという。実は出稼ぎが嫌になり、家族を放り出したわけではなかった。

 第83話(今月7日放送)。行方不明になっていた実は突如、姿を現し、みね子が働く東京・赤坂の洋食屋「すずふり亭」の料理ショーケースをのぞき、立ち去った。すずふり亭の店主・鈴子(宮本信子)と親しい実の行動としては違和感があったが、記憶喪失になっていたのだった。

 そもそも、みね子は父が行方不明になったことで、集団就職で上京した。第5週〜第10週は向島電機、第11週からはアパート「あかね荘」とすずふり亭を主舞台に、さまざまな出来事があったが、根底に横たわっていたのは父の問題。第2週(4月10〜15日)に、父が行方不明になったことが分かってから3カ月半。「どちらかと言えば、のどかな日常を描いてきた『ひよっこ』において、物語を引っ張ってきた最大のテーマ」(菓子氏)に、ついに切り込む。

 今作は「イグアナの娘」「最後から二番目の恋」などで知られる名手・岡田惠和氏(58)によるオリジナル脚本。朝ドラは「ちゅらさん」「おひさま」に続く3作目。朝ドラ王道パターンの「ある職業を目指すヒロイン」「偉業を成し遂げる女性の一代記」とは異なり、今回は「高度成長期を舞台に、一所懸命に生きた名もなき人々の物語を紡ぎたい」が岡田氏の出発点。みね子は目標達成に向け、あまり自発的に動かないキャラクターなので「“父の不在”が ヒロインを動かす要素となっています」(菓子氏)

 ただ「実さんが見つからないまま終わってしまっては、救いがない。当初から再会する前提で、どういう仕掛けがいいのか、いろいろと考えました。岡田さんの脚本には根っからの悪人は登場しないので、実さんも出稼ぎが嫌になって家族を捨てたということじゃなく、逆に家族思いであるがゆえに不在になってしまうという設定はないか。記憶喪失というのは確かによくある設定ではありますが、議論を重ねて、これに決めました」。そこには、戦争のトラウマが原因の記憶喪失(全生活史健忘症)が戦後に多く見られたという医学的根拠もあった。実も家族を愛するがゆえに、家族のための大切なお金を奪われた精神的ショックが大きかった。

 第18週以降の見どころについて、菓子氏は「違うドラマになったんじゃないかと一瞬思うぐらい、シリアスに振っています。ここまで、比較的ほのぼの路線で描いてきましたが、さすがにお父さんが見つかり、別の女性と暮らしていたという重い展開。谷田部家はどうなるのかという現実から逃げず、みね子や実たちの気持ちを真正面から掘り下げた結果、脚本・演出・演技の相乗効果で非常に見応えのある、息をのむ映像になりました」と手応えを示した。

 特に、有村を絶賛。「あらためて素晴らしいと思ったのは、どこまでも表情の引き出しがあるということです。ここまでも、決してテクニックじゃなく、気持ちの中から、いろいろな顔を披露してくれましたが、第18週に入って、今までにない感情を表現してくれています。喜怒哀楽で言うと『怒』。これまでの“みね子ちゃん”にはなかった顔が、ここで初めて出るんです。有村さんの底知れぬ可能性を見た気がして、驚きました」

 同時に、沢村についても「(実が記憶喪失になり)2役、演じているようなもの。一番難しかったと思います」と称賛。第2週で実の行方不明が判明して以降、出番は小出し。「この第18週の再登場に向け、撮影がない時も『今度出てくる時、実はどんなふうになっているんですかね』と演出陣と日々キャッチボールをされていました。普段は明るく冗談を飛ばす沢村さんですが、役に対しては非常に真摯。いろいろなアイデアを頂き、実のキャラクター造形に生かしています」と撮影の様子を明かした。

 俄然“シリアスひよっこ”に注目が集まるが、最後に「第18週以降の『ひよっこ』がドロドロのドラマになるかというと、決してそうじゃありません。シリアスな状況は逃げずに描きますが、その後、岡田さんがいつもの『ひよっこ』のテイストに戻してくれます。そこは安心して、ご覧いただきたいと思います」と付け加えた。菓子氏も「普通は書けません」と脱帽する、その“岡田マジック”に期待が高まる。

続きを表示

2017年7月31日のニュース