週刊少年ジャンプ“黄金期”は作者同士、読者と戦いの日々だった

[ 2017年7月16日 10:15 ]

「週刊少年ジャンプ展」の内覧に訪れた(1の左から)ケンドーコバヤシ、高橋陽一氏、秋本治氏、ゆでたまごの嶋田隆司氏、中井義則氏
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 来年50周年を迎える週刊少年ジャンプ(集英社)の歴史を掲載作とともに振り返る「ジャンプ展」が、18日から東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催される。来年の春と夏を合わせて全3回開催予定で、今回は1968年(当時は月2回刊)の創刊から80年代を振り返るという。

 記者の少年期は“ジャンプ黄金期”と重なる1980年代半ばから90年代。当時のジャンプ漫画が自身の人間形成に深く関わっているとまで思っており、展示を楽しみにしている。

 “黄金期”を彩った名作の1つ「キャプテン翼」の作者・高橋陽一氏(56)をインタビューした。漫画誌グランドジャンプで連載中の「キャプテン翼 ライジングサン」6巻が発刊され、翼シリーズが通算100巻に到達した取材だ。

 13日に行われた「ジャンプ展」の内覧会では「キン肉マン」の作者・ゆでたまごの嶋田隆司氏が、高橋氏について「目も合わせたくないくらいだった」と当時の火花散る関係を明かして話題になった。

 記者もインタビューの際に、高橋氏から、ゆでたまご氏に対する強いライバル心を聞いていた。高橋氏は当時のジャンプ連載陣の「みんながライバル」としながらも、真っ先にゆでたまご氏の名を挙げ「同い年だけど、僕より早くデビューして、キン肉マンがヒットしてましたしね。意識していました」と話した。

 戦いの相手は人気作家だけではない。「人気が下がると(連載を)打ち切られるのでね。読者との戦いもあった」と話した。読者を「ファン」や「味方」ではなく「敵」に見立てたところに、当時の緊張感がうかがえる。人気作品がひしめく中、無難に描いていては読者の心に刺さる作品は描けない。高橋氏は「思い返すと戦ってたなあ」と懐かしそうに話した。

 一方で記者は当時「北斗の拳」の原哲夫氏が、巻末の作者コメントで「ケンシロウの足が長くなったのは、キャプテン翼の影響です」と書いていた記憶がある。火花を散らしながらも“同志”だったのだと思う。高橋氏は「みんな影響し合ってましたね」とも話した。全く違う世界観の作品が集まり「ジャンプ」という個性とパワーがあった。

 今、当時のジャンプ漫画の多くが「翼」のように続編やスピンオフなど、世界観を同じとする“シリーズ通算”で続いている。掲載誌を変えながら「キン肉マン」「ジョジョ」「銀牙」「男塾」シリーズは100巻を超え、「北斗の拳」「シティーハンター」シリーズも80巻数前後に達している。当時つくられた世界観が独創的で、確かなものだったからだろう。当時の読者として“黄金世代”の息の長い活躍を嬉しく思う。

 スマホや電子書籍の普及で、読者は好きな作品だけを買う傾向が強まったとも言われる。配信サイトや漫画アプリの進化もあり、週刊や月刊の漫画誌の売上げ低下につながっているとの見方もある。

 だが漫画誌は日本独自の文化であり、作家同士が起こす化学反応もあり、世界に誇る日本漫画の体力の源だと思う。いろいろな作品が掲載され、物語が現在進行形で進んでいるような感覚は漫画誌だからこそ味わえるモノだ。ジャンプには、電子書籍の進化もうまく取り込み、次の黄金期を切り開いてほしいと願っている。(記者コラム)

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