ホームレス生活に30キロ減量…映画になりそうなクリス・プラットの出世物語

[ 2017年5月9日 14:50 ]

4月、ロンドンで行われた「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」プレミアでポーズを決めるクリス・プラット (AP)
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 ゴールデンウイークの映画興行はディズニーの「美女と野獣」が全国各劇場とも大入りで、前評判通りの強さを見せた。さて次は何を見ようかとネットを検索している洋画ファンのファーストチョイスは、12日に公開される大ヒットした米SFの第2弾「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」ではないだろうか。話題作を送り出し続けるマーベル・コミックの中でも、スーパーヒーローではない、ちょっと変わった異色のキャラクターたちが集まって宇宙を守る物語だ。

 2014年に公開された前作は、日本では興行収入は11億円だったが、全世界では900億円に迫るメガヒット。その続編として各国で公開が待たれている。

 この作品が注目を集めているのは、主人公スター・ロードを演じている俳優クリス・プラット(37)が次期ハリウッドのトップスターと期待されているからでもある。日本ではまだ誰もが知っているスターとはいえない(15年公開の「ジュラシック・ワールド」で恐竜ヴェロキラプトルを調教していた男の人、と言えば顔を思い浮かべていただけるだろうか)。先日、作品のPRで初来日したときも、メディアで大きく取り上げられることはなかった。とはいえプラットは今年日本で1月に準主役の「マグニフィセント・セブン」、3月に主演の「パッセンジャー」とすでに2本が公開されている。そして「ガーディアンズ…」。1年に3本もの“主演作”が公開される俳優も珍しい。

 数年前までハリウッドでもほとんど無名だったプラットは、それこそ映画にでもなりそうなサクセスストーリーの体現者でもある。大学を中退後、クーポンのセールスマンなど仕事を転々とし、友達に誘われハワイへ。そこでも順調とはいかず、林に止めた車の中で寝泊まりするホームレス暮らし。ノミとネズミに悩まされていたという。レストランでのウエイターの仕事にありついたある日、その店に来た米女優レイ・ドーン・チョン(「カラー・パープル」などに出演)に「私の監督作品に出ない?」と声をかけられた。それを機に本土に戻り、細々と俳優業をやっていた。

 名前が売れるきっかけは09年に放送が始まったコメディードラマ「パークス・アンド・レクリエーション」への出演。当初は数話にだけ顔を出す予定だったが、持ち前のコメディーセンスが視聴者に受け入れられレギュラーに昇格した。このドラマを見た「ガーディアンズ」の製作者が、ジェームズ・ガン監督にプラットを主人公に推薦した。だがガン監督は首を縦に振らなかった。プラットが太っていたからだ。それでも面接を行った。プラットに会ったガン監督は、“隣のお兄ちゃん”的なその雰囲気が作品のテイストに合うと思ったようで前向きになり、最終的にプラットを主人公に決めた。チャンスを得たプラットは一念発起。トライアスロンのトレーニングなどで、約30キロの減量に成功。劇中、見事なシックスパックを披露している。このプラットの肉体改造は、ハリウッド俳優の“ビフォア・アフター”としてネット上の数々の動画にも取り上げられている。

 「ガーディアンズ」の大ヒットで、ハリウッドの「Aリスト俳優」の仲間入りを果たしたプラット。その後、続々と公開された主演作は前述の通りだ。長い下積みを経験して、35歳近くになってから主役級スターになった経歴は、ハリソン・フォード(74)とかぶる。フォードも35歳の時に公開された「スター・ウォーズ」で不動の人気役者となった。日本の洋画配給関係者はプラットについて「下積みが長かったから、周囲のスタッフらへも人当たりがよく、“いいお兄ちゃん”といった感じで評判がいい。いまハリウッドは、次のスター男優を待ち望んでいる。何人か有力な俳優がいるが、クリス・プラットは間違いなくその1人」と話す。来年には「ジュラシック・ワールド」の続編が公開される。「ガーディアンズ…」もシリーズ化され、まだ何本も続きそうだ。プラットの日本での知名度も急上昇していくだろう。「将来的にはプラットが“インディ・ジョーンズ”シリーズを継いでいくのではないか、という声がハリウッドにはある」と洋画関係者。フォードも宇宙ものでスターになった。プラットがジョーンズ博士に?ジュラシックはスピルバーグ監督の作品であり、すでにインディ・ジョーンズとの接点はある。あり得ない話ではないかもしれない。 (記者コラム)

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2017年5月9日のニュース