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ポール・マッカートニーの置き土産

4月に来日したポール・マッカートニー
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 【牧元一の孤人焦点】ああ、ポール・マッカートニーはもう日本にいないのだな、と思う。今度はいつ来るのだろうと想像すると寂しい。最近は結構頻繁に来日したこともあって、以前ほど大騒ぎにならないけれど、ポールが日本に来て演奏するということは音楽史的に大変な出来事なのだ。例える必要もないのだろうが、あえて例えればモーツァルトやベートーベンが目の前で演奏するようなものではないか…。

 というわけで、今回の来日公演ももちろん見に行った。年々、声量が落ちているのは分かっている。披露する曲に大きな変化がないのも分かっている。チケット代1万8000円(2人分購入したので計3万6000円)も決して安くない。それでも、見に行かないわけにはいかない。なぜなら、ポールだからだ。小学生の時からずっと愛聴して来たビートルズの音楽的支柱だからだ。

 4月27日の東京ドーム。平日だが、会社には休暇をいただいた。取材で見るよりプライベートで見た方が音楽に没頭することができる。1曲目は「ア・ハード・デイズ・ナイト」。ジョン・レノンがメインボーカルだった曲をオープニングにするのはポールのサービス精神の表れだろうか。声は、やはり出ていない。もう何度も来日公演を見てしまっているから、初めての時のような鳥肌が立つ感動を味わうこともない。だけど、いいのだ。楽しいのだ。なぜなら、そこでベースを奏でながら声を張り上げているのが、ほかならぬポールだからだ。

 4曲目が良かった。日本語タイトルは「ワインカラーの少女」。ビートルズの曲ではなく、ウイングス時代の曲だ。考えてみれば、ビートルズを聴き始めた頃、もうビートルズは解散していて、同時代的に聴いていたのはウイングスの曲だった。「ワインカラーの少女」「あの娘におせっかい」「心のラヴ・ソング」「しあわせの予感」などなど。それらの曲を耳にすると、あの頃の甘酸っぱい気持ちがよみがえって来る。自分がビートルズファンであるとともにウイングスファンであったことを思い出した。

 26曲目の「サムシング」も良かった。実はこの1曲こそ聴きたかった。東京ドーム公演に先立って行われた日本武道館公演では演奏しなかったようなので、聴けなかったら嫌だなと思っていたが、ポールがウクレレを持った瞬間、来た!と思った。「サムシング」はポールの曲ではなくジョージ・ハリスンの曲だ。ポールはこの曲を披露する際、ジョージがこの曲を作った時のことを語りつつ、ウクレレを手に歌い出す。以前は最後までウクレレの弾き語りのままだったが、前回の来日公演あたりから、曲の途中からバンド演奏に切り替わるようになった。この弾き語りからバンド演奏に変わる瞬間が、なんとも言えずドラマチックなのだ。「サムシング」という楽曲の並々ならぬ美しさが際立つのだ。ステージ背後の大型ビジョンには若き日のジョージ、ポールの写真が映し出されている。歌い終わったポールは天に向かって語りかける。「ジョージ、素敵な曲をありがとう!」。この一言を聴いて感涙しないビートルズマニアがいるだろうか…。ビートルズと言うと、どうしてもジョンとポールが前面に出がちだが、やはりジョージ、リンゴの2人がいなければビートルズではないのだと改めて思った。

 もう日本にポールはいないが、あれからビートルズとウイングスの曲をよく聴いている。若いポールが歌う「ワインカラーの少女」、若いジョージが歌い、若いポールが美しいベースラインを弾く「サムシング」など名曲の数々が宝石のように輝いている。 (専門委員)

 ◆牧 元一(まき・もとかず)編集局文化社会部。放送担当、AKB担当。プロレスと格闘技のファンで、アントニオ猪木信者。ビートルズで音楽に目覚め、オフコースでアコースティックギターにはまった。太宰治、村上春樹からの影響が強い。

[ 2017年5月8日 09:00 ]

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