一見正反対?信念は同じ NHK人気ドキュメンタリー2番組

[ 2017年5月3日 10:00 ]

「プロフェッショナル 仕事の流儀」(左)と「ドキュメント72時間」(C)NHK
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 NHKで人気を集めるドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」(月曜後10・25)、「ドキュメント72時間」(金曜後10・50)。片や第一線で活躍する一流のプロに密着してその生き様を深掘りし、片や人々が行き交う街角で市井の人の日常を垣間見る。一見正反対の内容だが、根底で通じる信念とは?両番組のプロデューサーに話を聞いた。

 それぞれシリーズ放送開始から10年を超え、レギュラー放送だけでも「プロフェッショナル」は300回以上、「ドキュメント72時間」も150回以上。両番組ともテーマはどのように決めているのか。

 「プロフェッショナル」の大坪悦郎プロデューサーは「各業界の第一線で活躍している人で、なおかつ、生き方や哲学が視聴者の何かの参考になればという観点で人選している」と説明。一方、「ドキュメント72時間」の西島昌子プロデューサーは「基本的に日常的な場所でありつつも、次々と意外な人が来たり、なぜか日本の今が見える…みたいなギャップのある場所を選んでいますね」と基準を明かした。

 番組が歴史を重ねた今では、オンエアされることによる影響も大きい。「先日の(プロフェッショナル)『豆腐職人』放送後は、早朝5時、6時に常連さんが買いに行っても売り切れていたそうで。飲食店を取り上げると、そういうことがよくあると聞きますね」と大坪氏。それだけに飲食店に限らず「番組で扱ってほしい」という売り込みが局に届くものの、「“ウェルカムな現場”だと、取材相手との距離が近すぎて、何が本物なのか見失うことがある。そのため、向こうから依頼があっても遠慮させていただくことがある」と一線を引いている。

 「ドキュメント72時間」も、秋田のうどんの自動販売機を特集した後には行列ができたという。「店主の方が一人で機械のメンテナンスを行っていて、薬味のネギも手で刻んでいるので、腱鞘炎になってしまったことがあって。ご迷惑をかけてしまいました。その後別の理由で廃業することになったら、全国で存続運動が起きて、150メートルほど離れた道の駅に移って今でも稼働しています」。地元の人たちの営みがある場所で撮影することが多いため、過去には題材として興味深くても、常連客の邪魔をしたくないという思いから撮影を見送ったケースもあるという。

 互いの番組から影響を受けることもある。「プロフェッショナル」は1回分の放送内容を仕上げるために40日ほど撮影をする。そこでたまには『72時間』じゃないけど、時間を区切って撮ってみようとか。あるいは場所を限定して、そこに集まるプロたちを撮ろうとか、そういうことをスタッフと話し合っています。ちなみに、4月24日放送の『巨大クレーン船』は時間を区切って、プロも一人ではなく乗組員の群像にしてみました。ツイッターにも『72時間っぽい』という書き込みが見つけました。いいものは積極的に取り入れています」(大坪氏)。

 両番組の共通点、相違点について大坪氏は「(『プロフェッショナル』は)たまに有名人も出ますけど、基本は市井の人の今を見せる。その点は(『ドキュメント72時間』と)一緒だと思う。ある個人が抱えている仕事や働き方を、“縦に深掘り”していくのが『プロフェッショナル』。一方、ある場所に集まっている人たちを、“広く水平に”切り取って今を映し出すのが、『72時間』。演出やアプローチは違うが、“今をガチンコで見せる“という意味では、差は感じてないですね」と話す。西島氏も「どんなプロフェッショナルな人でも、たとえば新宿の飲み屋で会ったら酔っぱらって鼻毛が出ていたりする。どちらの面を切り取るかの違い」と、同じ事象であっても見る角度が違うだけと考えている。

 両番組にもう1つ共通するのはテーマ音楽が持つ力。「プロフェッショナル」の「Progress」はスガシカオ(50)をボーカルに、番組のために結成されたバンド「kokua」の書き下ろし。「ドキュメント72時間」のテーマソング「川べりの家」はそれとは対照的に、音響効果担当がたまたまCDショップで流れているのを耳にして選んだもの。「あの音楽が流れると無事終われるみたいな」(大坪氏)、「ロケの撮れ高がちょっと苦しい時も、ぐっとまとまった感じになる。助けていただいています」(西島氏)と番組を締めくくる効果を大いに感じているという。

 きょうもまたその道のプロが汗を流し、どこかの街角では人々が行き交っている。その姿を、これからも両番組は撮り続ける。

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2017年5月3日のニュース