4月もライオン

[ 2017年4月19日 08:34 ]

映画「3月のライオン前編」の初日舞台あいさつを行った(左から)倉科カナ、神木隆之介、有村架純
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】話題の映画「3月のライオン」(大友啓史監督)を見た。ストーリーを追う一方、王将戦の取材などでお世話になった棋士の皆さんがちょい役で出演しているのをいちいち確認。「おっ、いたいた」という感じで楽しんだ。これって変かなあ。

 2年前の王将戦で記録係を務めた佐々木大地四段がさりげなく登場していた場面には少々感激した。当時は三段、つまりプロになる一歩手前。打ち上げではウーロン茶を飲みながら過酷な三段リーグ戦について興味深いエピソードをいくつか話してくれた。その後のリーグ戦で詰みを逃し逆転負けを喫した際には丸刈りになって出直しを期した熱い男。四段昇格時はフリークラスに甘んじていたが、2月のNHK杯予選で直近成績20勝8敗の高勝率となり、順位戦C級2組への昇格が決まったばかりだ。映画の撮影はその前だったろうけど、彼にとってはいい記念になったと思う。

 作品そのものも印象深かった。プロ棋士を演じる俳優が、当たり前だけど本物のプロ棋士に見える。特に対局中の所作が見事だ。駒を扱う際の、指先の微妙な動き。心境を相手に悟られまいとポーカーフェースを装いながらも動揺を隠しきれない息遣い。投了時の「負けました」という短いせりふも、それぞれが高度なリアリティーに満ちていた。一部デフォルメされすぎた部分があったにせよ、まるで「棋士あるある」の様相。出演俳優の演技力にあらためて心を打たれた。

 実際のところこの映画、プロの棋士がアドバイスを送っているのだから、ある意味当然かもしれない。羽海野チカの原作も監修している先崎学九段に加え、若手の村中秀史六段、藤森哲也四段が撮影にほぼ帯同。対局の場面では現実感を醸し出すため、実存する棋譜を初手から再現したという。もちろん映画となるのはその中のわずか数カットでしかない。ここまで細部にこだわれば迫力も増す。取材も執筆もテキトーで、粗製乱造をもってよしとする筆者には、こんなこと逆立ちしてもできない。

 そういえば昨秋公開された「聖の青春」(森義隆監督)で主人公の棋士・村山聖の弟弟子役だった染谷将太も「3月のライオン」に出演している…のだが、予備知識がないと誰を演じていたのか分からない。このあたりはぜひとも映画館でご確認のほどを。4月22日には後編も始まる。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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2017年4月19日のニュース