チベットの天才子役にしびれた!

[ 2017年4月2日 09:00 ]

映画「おしん」に主演した濱田ここね
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】4月29日に東京・岩波ホールで封切られる「草原の河」という映画を3月29日の試写会でお先に拝見した。監督はチベット・アムド地方出身のソンタルジャ氏(43)で、チベット人監督による劇場公開作品は日本でも初めてなんだそうだ。

 2015年にベルリン国際映画祭ジェネレーション部門でお披露目されたのを手始めに上海や東京など数多くの映画祭で上映されて評判となっただけに、京橋のテアトル試写室は最終回でもないのに満員。注目度の高さを物語った。

 チベット高原の厳しい自然の中で牧畜を営む家族の物語だ。4年前のある出来事をきっかけに自分の父を許せない一家のあるじ。乳離れ出来ていない幼い娘は、やがて生まれてくる赤ん坊に母を取られてしまうのではないかと小さな胸を痛めている。娘、父、そしてその父…。家族三代の心情がチベットの大自然の中で繊細に描かれる。

 とりわけ娘を演じたヤンチェン・ラモという子役には心を奪われた。撮影開始時、6歳だったというが、ほとんどワンテークで監督からOKをもらったというから天性の才を持っているのだろう。この名演で彼女は上海国際映画祭アジア新人賞最優秀女優賞を史上最年少で贈られている。

 スクリーンに彼女の顔が大写しになる度、「あれ、この子、誰かに似ている。誰だっけ?」と気になったが、少ししてハタと気がついた。映画「おしん」に主演した濱田ここねだ。

 NHK朝の連続テレビ小説として1983年から84年にかけて放送され、平均視聴率が52・6%(ビデオリサーチ調べ)を記録した怪物ドラマ。その放送開始から30周年を記念して製作・公開されたのが映画「おしん」(監督冨樫森)だった。濱田はオーディションで約2500人の中からヒロイン役を射止めたシンデレラで、見事に現場で才能を開花。2013年(第68回)毎日映画コンクールでスポニチグランプリ新人賞を史上最年少の9歳で受賞した他、日本アカデミー賞新人賞にも輝いている。

 顔の作りが似ているから、まるで姉妹のように感じられた。濱田は3月31日で13歳になる。女優業と学業との両立をこなしながら頑張っているが、“チベットのここね”も現在小学校に通って勉学に励んでいる。日本とチベットの天才子役、いつか対面させてみたいものだ。

 さて、毎日映コンで濱田とともにスポニチグランプリ新人賞を受賞したのが、今を時めく星野源(36)だ。対象作は「箱入り息子の恋」(監督市井昌秀)だった。昨年出演したTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が大評判。主題歌「恋」もヒットし、第89回センバツ高校野球の入場行進曲にも使われたほど。4年前もコアなファンはいたが、いち早く才能を評価した毎日映コンの選考委員たちの慧眼(けいがん)には今更ながら恐れ入る。(編集委員)

 ◆佐藤 雅昭(さとう・まさあき)北海道生まれ。1983年スポニチ入社。長く映画を担当。

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