「直虎」今川義元“ナレ死”の理由 扇で権威失墜象徴 “異例”の桶狭間

[ 2017年3月6日 08:00 ]

大河ドラマ「おんな城主 直虎」で今川義元を演じる春風亭昇太(C)NHK
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 5日に放送されたNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(日曜後8・00)で桶狭間の戦いが描かれ、春風亭昇太(57)演じる今川義元が討ち死に。井伊直虎(柴咲コウ)の父・直盛(杉本哲太)ら井伊家の中心人物も数多く散った。義元はここまで不気味な存在感を発揮してきたが、最期はまさかの“ナレ死”。ツイッター上では「さすがに驚いた」「もう少し見たかった」「怪演もナレ死には勝てなかったか…」と反響を呼んだ。

 制作統括岡本幸江チーフ・プロデューサーは、織田信長の視点で桶狭間の戦いを描いた作品は過去の大河で数多くあっても「勝つはずだった今川方が負けて、これだけの被害を被ったという描き方は珍しいのではないか」と説明する。

 井伊家の菩提寺である龍潭寺には、今でも桶狭間で亡くなった武将の石仏が16個並んでいるという。「井伊家は実戦できる武将を全員失ったと言われていて。仏様が450年たってもそこに大事に置かれている事実に、受けた打撃が今も残っている気がします。そうしたところを大事にしてドラマ化させていただきました」と「直虎」流の桶狭間の戦いを語った。

 今作で義元は井伊家に対して絶対的な力を持った存在として描かれてきたが、討ち死にする瞬間は描かれない、いわゆる“ナレ死”の最期となる。それはなぜなのか。

 「軍記物を見ると、斬りかかってきた人の指を食いちぎるなどものすごい抵抗したようです。でも奮戦の結果、負けてしまった今川義元というものを描きたいかというとそうではなくて、大権力で絶対負けるはずのなかったものが、番狂わせでなぎ倒されるというような場面を描きたかった」

 扇が踏みつけにされるというシーンで義元の最期を表現。「権威というものが踏みつけにされるような。生身で剣を持って立ち向かうといった形にはせず、いつもエレガントで扇一つですべてを差配できる、最上の人として描いてきた人が地に落ちる。そういう意味ではちょっと象徴的にしました」と振り返った。

 もともと義元の大ファンだったという昇太は序盤で退場してしまうことを残念がっているかと思いきや「ご本人は太守様としての格好も戦装束も全部できたので、満足してくださったのではないでしょうか」と岡本氏は笑った。

 井伊家にとって大きな傷を残した桶狭間の戦い。だが、井伊を揺るがす悲劇はこれだけでは終わらない――。

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2017年3月6日のニュース