英文で読むトランプ大統領の就任演説〜傾向と対策

[ 2017年1月28日 08:30 ]

ポーク卵
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 【笠原然朗の舌先三寸】第45代アメリカ合衆国大統領にドナルド・トランプ氏が就任。1月20日(日本時間21日)に大統領就任演説が行われた。

 22日、毎日新聞の朝刊に就任演説の全文が英語と日本語訳で掲載された。

 トランプ氏の評価がどうの、という前に何を話したのか気になった。

 日本語訳をまず読み、次に英文に目を通した。私は普段、英文に触れる機会もほとんどなく、ましてや会話は片言程度…の英語力しか持っていない。

 そんな私が、いやー、驚いた。

 トランプ氏の話した英語のわかりやすいことにだ。語彙、文法などいずれも日本の中学校3年生ぐらいなら楽々、理解できるのではないか。

 米国の政治家にはお抱えのスピーチライターがいるという。トランプ氏の意向をくみ、練り上げた内容なのだろう。この“わかりやすさ”は作られたものだ。

 語彙の選び方について特徴があることに気がついた。

 頻出する単語が明らかだということ。

 まず主語の「We」(私たち)が46回。「our」、「us」が40回。「America」、「American」、「United States」が実に35回。ほかに「people」(国民)が7回、「great」(偉大な)が7回、「again」(再び)が8回。

 トランプ氏の文脈で、「We」とは、「私たち米国民」のこと。

 これらの単語をつなげてみる。「We」、「people」、「great」、「America」、「again」。「私たち米国民は偉大なアメリカを再び」となった。

 そして、ポピュリストでアジテーターでもあるトランプ氏の真骨頂は、さらに発揮される。同じ単語の繰り返し。たたみかけるようでもある。

 たとえばこんな部分。「one」を繰り返して、「We share one heart,one home,and one glorious destiny」(私たちは1つの心、1つの家、1つの輝かしい運命を共有しているのです)

 演説の締めの一節。

 「Together ,we will make America strong again.We will make Arerica wealthly again.We will make Arerica proud again.We will make Arerica safe again.And,yes,together,We will make Arerica great again.」

(私たちは一緒になって米国を再び強くします。米国を再び豊かにします。米国を再び誇り高い国にします。米国を再び安全にするのです。そうです。ともに、米国を再び偉大な国にするのです)

 「1つの家」の意味するものは?「国民」に移民は含まれているの?とか、「どうやって偉大な国にするの?」とか、「偉大ってどういう意味で?」とか立ち止まって考えれば、空疎な言葉の羅列であることに気がつく。

 ただ、考えることを放棄すれば、内容はないが、魅力的な言葉の連なりではある。

 たとえて言うなら、体がデカくて派手で、大金持ちでいかにも頼りになりそうなおっさんが、庶民に向けてわかりやすい言葉で「俺様が天下をとったのだから、もう心配するな。何も考えるな。黙って俺に付いて来い!」と言うような。

 反トランプの動きが世界中に広がっているという。反対勢力は、どのような言葉を駆使して反トランプを訴えていくのか?そのためにはトランプ氏の“わかりやすさ”に対抗するだけの言葉を共有する必要があるだろう。それができなければおそらくトランプ氏には勝てない。

 よ〜く考えよう。トランプ氏のわかりやすさは危険だ。(専門委員)

 ※日本語訳は毎日新聞から

 ◎ポークたまご

 沖縄では米国統治時代の“遺物”ともいうべき「ランチョンミート」が

よく食べられている。

 炒め物やおにぎりの具材などに用いられることが多いが、もっともシンプルなのは「ポークたまご」。ハワイ出身の大相撲元横綱の曙が、「おふくろの味」としてこの料理をあげていたのを何かの本で読んだことがある。

 (1)ランチョンミートを2センチほどの厚さに切る。

 (2)表面に少し焦げ目がつくぐらいまでフライパンで焼く。

 (3)(2)を皿に並べてから、溶いた卵をフライパンに入れ、卵焼きを作る。オムレツのように上手に作らないでもよい。

 (4)焼いたミートと、卵焼きを皿に並べて、ケチヤップをかけてできあがり。

 黄色い卵焼きはトランプ氏の髪の毛、ケチャップは赤いネクタイをイメージして盛り付けた。

 ◆笠原 然朗(かさはら・ぜんろう)1963年、東京都生まれ。身長1メートル78、体重92キロ。趣味は食べ歩きと料理。

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