香川照之 不気味の中にチャーミング 熟成した凄味で助演賞

[ 2017年1月19日 05:30 ]

2016年毎日映画コンクール

男優助演賞に輝いた香川照之
Photo By スポニチ

 映画界にも居続けてもらわなければ、やはり困る人である。「クリーピー 偽りの隣人」の卓抜した演技力で香川照之(51)が男優助演賞に輝いた。「独立少年合唱団」「スリ」以来16年ぶりの毎日映コン助演賞となるが、まさしく“大向こう”をうならせてみせた。

 「2012年に歌舞伎の世界に入りましたから、11年を境に出演本数が激減しました。昨年出た映画はこの一本だけ。その上、50代になっていきなり賞を頂けたのですから非常にうれしいです」

 奇妙な隣人に翻ろうされる夫婦の恐怖を描いたサスペンススリラー。香川が扮した隣人の西野は実に不気味だった。「黒沢清監督が書かれた脚本が既に99%出来上がっていた“気持ち悪さ”を持っていたので、僕があえてプラスアルファすることなく成立するなと思いました。そんな脚本を与えていただけて、すべては監督のおかげです」

 西野の人物像について「自分は正しい。自分ほど慈悲深い人間はいないと思い込んでいる、そんな間違いがある人」と分析。どこかチャーミングにも映ったところが香川の底知れぬ凄みだ。

 絶大な信頼を寄せる黒沢監督とは「こういうエキセントリックな役をやりたいと思っている役者さんは30代、40代にはいっぱいいる。そんな若者たちに、熟成したもの、まねできないぐらいのものを見せてやろうと話した」と秘話も明かした。

 現在、市川中車として新橋演舞場「新春大歌舞伎」の舞台に立っている。大忙しだが、どうか銀幕もお忘れなきように。

続きを表示

2017年1月19日のニュース