直虎 無名だからこその作りがい 制作統括が語る大河ドラマの作り方

[ 2017年1月8日 08:00 ]

NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で主演を務める柴咲コウ
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 柴咲コウ(35)主演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(日曜後8・00)が8日にスタートする。残された史料が非常に少なく、謎多き人物である井伊直虎の生涯をどのように描くのか、制作統括(CP)を務める岡本幸江氏に話を聞いた。

 史料が少なく、歴史上の人物としての知名度も低いことはドラマ作りで良し悪し両面ある。岡本氏は「(直虎がどんなことを成したのか)ディテールがわからないということは、ドラマとしては過程がどうだったのか、想像の翼が広がる。ドラマチックに描ける」とメリットを語る一方で、「知っている方が少ないので、どういう物語なのか、何が待ち構えているのかぱっと視聴者の方にイメージしていただきにくいかも」とも口にする。ただ、「イメージしづらい」というデメリットは「見ていただかないとわからないような、ドキドキするような時代劇にできる余地がある」とポジティブにとらえている。

 直虎は実は男性だったという説が先日発表されたが、「諸説がある人物だということはわかっていて。先日出てきた資料も『なるほど、そういう受け取り方をするか』という内容だったが、実態が今となってはわからない方」と意に介していない。そもそも大河ドラマは史実に厳密に沿って作るものではなく、「時代を背景とした豪華なエンターテイメント作品」だと考えているため、「事実がどうだったかは歴史家にお任せするとして。我々は戦国時代を生きぬくために必要だったであろうことに思いをはせ、彼女の生き方は総体としてこうだったのではないかと描きたい。歴史的事実を参考にさせていただきつつ、ドラマを構築するという作業は変わらない」とスタンスを語った。

 井伊家が戦に負け続け後を継ぐべき男子が次々と失われてしまう中、尼でありながらお家を背負って立ち上がったのが直虎という人物。今川や武田など周辺の戦国大名に脅かされる人生は逆境続きのようにも見えるが、比較的史料のある“逆境時代”よりも、史料が残っていない城主時代をたっぷりと描く予定。「彼女なりにとんでもない発想をしたり、周囲も最初は総スカンだったのが少しずつ手を貸してくれたり。着実にやってきたことがある結果を生んだり、それが次の世代につながっていったり。一歩一歩着実につないでいく部分を大事に描きたい」。

 歴史上何か大きなことを成し遂げた人物ではないものの、「次の世代に託せる人物(直政)を見つけ出して、彼がきっと次の世代に花咲くことを感じながら死んでいけたということは、“読後感”としてはとてもいいものになるはず」と自信を見せる。

 周辺の大国が力を持ち、何とかやりくりしていくという井伊家の生き方は、現代の日本にも通じるところがあるのでは、とも指摘する。「人手不足で借金かさんで、と大変な状況で。でもそういう中でどういう世の中を作っていきたいのか愚直に考えた人が直虎。具体的な策が直接現代に使えるわけではないにしても、へこたれないマインドが見ている方の元気の源になれば」と力を込めた。

 直虎は遠江(静岡県西部)の武将・井伊直盛の一人娘として生まれ、男たちが戦乱で絶えたため男の名前で家督を継ぎ、知恵と負けん気で井伊家を守った。後に徳川家康の重臣となる直政を養母として育て、幕末の大老・直弼の先祖にあたる。初回「井伊谷の少女」は60分の拡大版で放送される。

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