巨泉さん、医師の問いかけに衝撃受け…妻・寿々子さん「生きようとしていたのに」

[ 2016年12月23日 10:00 ]

大橋巨泉さん
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 司会者、放送作家、ジャズや競馬の評論家などマルチに活躍した大橋巨泉さん(享年82)が7月12日に急性呼吸不全で亡くなった。競馬、麻雀、ゴルフという趣味を突き詰めて56歳でセミリタイアするなど、時代の先頭を走った巨泉さん。その活動を支え続けた寿々子夫人(68)がスポーツ紙の取材に初めて応じ、「(自身が)死ぬまで納骨はしなくていい」とあふれる愛情を語った。

 結婚してから47年間、巨泉さんと苦楽をともにした寿々子さんは、外出する際、遺骨を持ち歩いている。全身の重さ約2・5キロの遺骨を手作りの巾着に入れ「クリスマス用に着せ替えたばかり。可愛いでしょう」と巨泉さんのトレードマークをイメージした黒縁眼鏡のワッペンをこちらに向けた。

 心境について尋ねると、涙をこぼした。「ただただ寂しいです。入院中に主人の着ていたものを洗ってしまい、“これが主人のにおい”だというのがあまりないんです。それなら、奇麗にしなければよかった」

 巨泉さんは05年に胃がんの手術を受け完治。だが、13年にステージ4の中咽頭がんを発症した後、3度のがん手術を受けた。寿々子さんは巨泉さんの死後「闘病生活に“アッパレ!”をあげてください」と書面でコメントする一方、「最期の在宅医療の痛み止めの過剰投与がなければ」とも訴えた。今も「あの時の主人は気の毒でした」と無念の思いは消えない。

 巨泉さんは国立がん研究センターでの治療を終え、4月から千葉県の自宅での在宅医療に切り替えた。1カ月後にカナダで療養する計画を立て体力増強に努めようと、がんセンターから地元の在宅診療所を紹介してもらったが驚く場面に遭遇。

 まず、医師に驚いた。「名前も言わずあいさつもなく、いきなり“大橋さん!どこで死にたいですか?”と聞いてきた」という。「私は顔をバチッと殴られたような衝撃でした。主人は生きようとしていたのに風船がしぼんでいくように気力が衰えていったんです」。その後、モルヒネ系の鎮痛剤の処方法などでも日増しに不信感を募らせたという。巨泉さんは在宅医療中に体力が急速に減退。わずか5日間で医師に断りを入れた。「在宅医は玉石混交」との指摘があり、寿々子さんは「国が急速に在宅医療を推し進めている弊害は出ていると思う」と話した。

 2025年には人口の5人に1人が75歳以上となる時代に、一石を投じて巨泉さんは旅立った。結婚50周年の金婚式を夫婦で祝うのが夢だった。寿々子さんは遺骨を抱きしめ「一緒にいて金婚式を迎えたい。死ぬまで納骨はしなくていいと思っています」とほほ笑んだ。

 ▼巨泉さんの闘病生活 05年5月に胃がんを患っていたことが発覚し、6月に手術。8年後の13年に中咽頭がんを発症し放射線治療を受けた。14年にリンパ節、15年に左右の肺へ転移が見つかる。同年11月に腸閉塞(へいそく)を発症し一度は治ったかに見えたが、同月末に2度目の腸閉塞で手術。今年2月には左鼻腔(びくう)内にがんが判明。3月に治療が終わったが、在宅医療中に体調が悪化。4月11日から救急病院の集中治療室で治療を受けていた。

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