東京湾から眺める日本一と二番目、そして不思議な神殿

[ 2016年12月15日 11:30 ]

タコのガリシア風
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 【笠原然朗の舌先三寸】取材を兼ねて正月用のマダコを釣りに浦安の釣り宿「吉久(よしきゅう)」に出かけた。

 マダコを釣りに…と人に言うと、よく「タコ壺を使って?」と聞かれる。マダコテンヤと呼ばれる鉤状のハリが付いた道具に、イシガニをタコ糸と輪ゴムで結び、竿は使わず手釣りで釣る。

 「タコ壺」の質問以前に、「どこで?」と聞かれることも多い。「東京湾で」と答えると一様にびっくりされる。

 東京湾を指して「江戸前」と呼ぶ。「前」は「沖」と同義語で、湾の一部、狭い範囲を「江戸前」と呼んだという説もあるが、ここでは東京湾全体。江戸川、荒川、多摩川、支流の隅田川が流れ込む内湾で、地図を見ると漏斗状に海が広がっているのが分かる。川からの富栄養で育つ魚は700種類以上と言われる。特にスズキの漁場としては日本一。マダコは「西の明石、東の富津」と呼ばれるほど味が良い。

 釣り記事の取材で、よく東京湾に出かける。そちらは本紙・釣り面に譲るとして、今回は釣り船からの眺望について。

 江戸川に係留された釣り船は早朝、川を下り海へ。見えてくるのは東京ディズニーリゾート。海上から眺める「夢の国」。動かない船「SSコロンビア号」の煙突から煙が上がっている。

 釣り船が向かった先は東京湾アクアラインの「海ほたる」。逆光に浮かぶこの人工建造物、シルエットが何かに似ていると思ったら、仏の観光地として有名な「モン・サン・ミシェル」。こじつけが過ぎるか?

 しばらく釣って、船は一気に横浜沖へと転進。

ベイブリッジ、ランドマークタワーの背景には雪を抱いた富士山。そして前山の間に雪を抱く山の連なり、写真では見にくいが南アルプスの北岳だ。標高3192メートル。日本1、2位の高峰と、日本で2番目に高いビルを一望のもとにすることができる。この発見が面白かった。

 3時まで釣って終了。日没に追いかけられるように船着き場まで1時間の航程。途中、富士山はまた違った表情を見せる。影富士を背景に羽田空港から飛び立つ飛行機をカメラに収める。

 そして羽田空港のD滑走路。桟橋構造になっており、整然と立ち並ぶ柱を指して「海の神殿」と呼ばれることもある。

 羽田空港を利用する人のいったいどれだけが、滑走路下に林立する柱のことを知っているのだろうか?

 ゲートブリッジとスカイツリー。ここでも“日本一”に出合うことができる。それにしても東京の高層ビル群である。

 普段、たとえば銀座や六本木、渋谷を歩いていて海を意識することはないと思う。だが船から眺める東京はまるで海に浮かぶ水上都市だ。

 江戸川河口から海ほたるを経由して横浜沖から羽田空港沖へ、これだけの範囲を周遊する遊覧船はない。移り変わる景色は、釣り船の機動力があってこその贈り物だ。(専門委員)



 ◎マダコのガリシア風

 スペイン・ガリシア地方のタコ料理。タパスとしてワインにもよく合う。

 (1)ゆでたタコを一口大に切る。

 (2)上から塩(天然塩を使用してください)をふりかけ、オリーブオイルをかけ回す。最後にパプリカを振ってできあがり。

 ※釣りダコで作ると絶品だが、スーパーなどで売られているものでもたぶんおいしい…と思う。

 ◆笠原 然朗(かさはら・ぜんろう)1963年、東京都生まれ。身長1メートル78、体重92キロ。趣味は食べ歩きと料理。

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