「続・深夜食堂」封切り 小林薫 還暦越え工夫加える演技の“味付け”

[ 2016年11月5日 08:45 ]

「続・深夜食堂」への思いを語る小林薫

 映画「続・深夜食堂」(監督松岡錠司)が5日に公開される。心温まる料理や懐かしい街並み、人情ストーリーというどこか“昭和”を思い起こさせる原作漫画やドラマがファンの心をつかんで放さないが、銀幕でも昨年上映された前作は国内にとどまらずアジア圏でも大ヒット。いかにも日本的な作品がなぜ国境を超えて支持されたのか?さらに続編は?シリーズ第2弾の封切りを目前に控え、主演の小林薫(65)に聞いた。

 「日本ではバブル崩壊と経済停滞で“このままの世界でいいの?これで幸せなの?”っていう感情が芽生えた。中国や韓国の人も、国が発展し、給料も増えて暮らしがよくなった半面、そんな感情を持っている人もいて、そこが共感を呼んだのかもしれないね」。顎に手をやり、少し考えた小林はそう切り出した。

 深夜0時から朝7時まで、繁華街の路地裏でひっそりと営業する気のいいマスター(小林)の店「めしや」。その味と居心地の良さに引かれ、毎晩、ワケありな客が訪れてはさまざまな人生模様を繰り広げるのが、ファンならご存じの「深夜食堂」ワールドだ。前作は国内での大ヒットにとどまらず、アジア各国でフィーバーを巻き起こした。松岡監督も「あえていえば“人の情け”。それが通じたのかもしれない」と分析したが、台湾では15年上半期公開の邦画の中で1番の興収をあげ、韓国では00年以降の同規模公開作品の邦画の中では歴代1位を記録した。

 「中国や韓国に行っても新しいビルがどんどん建って、急速に近代化される一方、古い街並みが破壊されている。そんな中で今と反対の懐かしい風景をみんな求めてるんじゃないかな。言ってみれば、深夜食堂は近代的な新宿の街から一歩外れれて迷い込んだ路地裏にある“ファンタジー”な世界。壁を越えたら魔法界のハリー・ポッターみたいなものかも」。

 ドラマの最新シリーズはインターネット動画配信の世界最大手「Netflix(ネットフリックス)」オリジナル作品として登場。一足早く先月、世界190カ国で全10話の配信が始まっており、相乗効果で映画も人気を集めそう。「長年やって“めしや”はもう家のようなもの」と語る不破万作(70)、松重豊(53)、オダギリジョー(40)らなじみの常連客に、前作でゲストだった多部未華子(27)、余貴美子(60)も仲間入り。佐藤浩市(55)ら豪華ゲストも交えながら、人情物語が展開される。

 09年10月に放送を開始したドラマの最初のシリーズから7年。マスター役は当初は50代で演じていたが、今は還暦を越えて、長い付き合いに。「当初は(マスターとは)こういう人っていう気構えもあったけど、年とともにどうでもよくなって(笑い)。(役作りは)基本は監督に任せてますが、ただ、見る人が“こんな一面もあるんだ”みたいな部分を今回さりげなく入れてみたりはしました」。年齢に合わせ、演技の“味付け”にも少し工夫を加えたよう。

 続編もできて映画のシリーズ化という面では3作目も気になるところだが、「例えば監督が(他に)どういう映画を撮るかにもよるし、続けたくないっていえば続けようにもね」と慎重。一方で「ただ、物事が動く場合、何かに動かされてそうなるってことが結構ある。そうすれば何作でも作れますからね」とも。「次は監督、ソウルに行きますよ」とドラマでは一度あるが、映画では初となる海外撮影まで予想。その時、マスターの決めゼリフになぞらえて「できるもんなら何(作)でも作るよ」が小林の喉元まで出掛けた気がした。

 ▽「続・深夜食堂」 「めしや」のマスターと常連客らを中心にしたストーリーで3部構成。第1部「焼肉定食」では出版社勤めの編集者役で河井青葉(34)、第2部「焼うどん」では近くのそば屋の一人息子役で池松壮亮(26)、第3部「豚汁定食」ではお金に困った息子に頼まれ福岡から上京した母親役で渡辺美佐子(84)がメインゲストとして登場する。

 ◆小林 薫(こばやし・かおる)1951年(昭26)9月4日、京都府出身。77年「はなれ瞽女(ごぜ)おりん」で映画デビュー。「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」(07年)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞。NHK連続テレビ小説「カーネーション」(11年)などドラマにも数多く出演。来年1月から大河ドラマ「おんな城主 直虎」で南渓和尚役を演じる。1メートル75、血液型A。

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