中川晃教 ミュージカルで高音封印、色男に挑戦!結婚願望も

[ 2016年10月30日 10:00 ]

稽古場でポーズを決める中川晃教
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 米ニューヨークで大ヒットしたミュージカル「マーダー・バラッド」(スポーツニッポン新聞社主催)に、ミュージカル界屈指のエンターテイナー・中川晃教(33)が挑む。日本人離れしたハイトーンボイスが一番の魅力だが、今回は低音域を駆使するニュースタイルに挑戦している。毎年ほとんど休まず舞台に立ち続けながらも、新しい可能性を探り続ける貪欲な姿勢。その原動力は7年前のつらい体験にあった。

 稽古場の中央に、骨組みがむき出しの長方形のテーブルが置かれていた。高さは1メートル程度で長い方の幅は2メートル以上あるだろうか。中川はそのテーブルの表面をトントンと指で軽く叩いて「これ、食卓にもビリヤード台にもなるんです。舞台の小道具って面白いでしょ?」と、さりげなく小道具担当スタッフのアイデアを褒めた。

 どんなスタッフにも最大限の敬意を払い、チームを一つにまとめるキャプテンシーの持ち主。「ミュージカルは1人じゃできません。でも稽古を続けているとカンパニーとしてみんなが一つの方向を向く瞬間があるんです。それがたまらないんですよね」。さらに並外れた歌唱力と情熱あふれる演技力も併せ持つのだから鬼に金棒。製作サイドからも全幅の信頼を寄せられる。2013年2月から約3年半で、舞台に立たなかったのは今年の3月だけ。まさに引っ張りだこだ。

 そんな中川が新作舞台「マーダー・バラッド」でちょっとした初体験をしている。中川が演じる主人公のトムは女に困ったことがないプレーボーイ。「上半身タンクトップでシャツを羽織り、割と激しい男。こういうタイプはあまり演じたことがないんですよねぇ」と苦笑いする。また、物語の背景に殺人事件があるダークな雰囲気からか、持ち前のハイトーンボイスも封印。「ちょっとフラストレーションがたまるくらい低い声で歌っています。でも、やったことのない役と歌い方に挑戦することで、新しいパッションが僕の中に生まれたらいいな、とも思っているんですよね」。自分の感情と作品が化学反応を起こすことを楽しみにしている。

 「挑戦」は中川の座右の銘だ。心に刻みつけたのは2009年2月。出演予定だったミュージカル「スーパーモンキー」が上演中止に追い込まれたのがきっかけだった。中止の原因は共演者の体調不良で、初日まで残り3週間という時期に突然決まった。台湾などアジアでの上演も決まっており、2年以上かかるビッグイベントのはずだった。それだけに、ただただぼう然となった。

 その後に来た感情は「当たり前に幕が上がると思っていたものが上がらないこともある」という無常感。続いて「漠然と仕事をしていたら大変なことになる。人に選んでもらえる役者にならないと」という思いを強くした。

 2年先までのスケジュールが白紙となった。ところが、幸いにも「空いたのなら」とオファーしてくれる人がたくさんいた。その中には「スーパーモンキー」に出演していれば物理的に不可能だった大河ドラマ「天地人」への出演もあった。

 「ミュージカル以外も何でも挑戦したんですが、振り返るとあの2年間はエンターテイナーとして、大きな糧になっていると思います」。芸能生活最大のピンチを見事にチャンスに変えた。

 がむしゃらに仕事をした2年を経て、熱望していた“選んでもらえる役者”にはなったが、忙しすぎるのも考えものだ。交際した女性とは「仕事と私、どっち選ぶの?という状況にもなるわけですよ。そしたら僕は“当然、仕事だろ!”となっちゃうんですよね」と頭をかく。結局、どの恋愛も結婚にたどり着くことはなかった。

 3年半前から、祖父が亡くなって一人暮らしだった祖母と暮らし始めたが、これが想像以上に心地よかった。「互いに干渉し合うことはないんですけど、僕が大変なときは親身になって、必ずいろいろと補ってくれるんです。こういう関係を築けるのなら結婚もいいなぁと思いましたね」。

 今年1月に祖母が他界した。18歳で上京して、祖母と暮らした以外はほとんど一人暮らしで、それに慣れているつもりだったのに、どこかポッカリ穴が開いたような感覚が続いている。「だから今は結婚願望が強いんです。ま、相手はいないんですけどね」。祖母との同居生活を通じて結婚観も大きく変わった中川。公私ともに充実する日も近いかもしれない。

 ▼マーダー・バラッド 2013年に米ニューヨークのオフ・ブロードウェーで上演され、大ヒット。満を持しての日本上陸だ。舞台はニューヨークのダウンタウンのバー。経営者のトム(中川晃教)は店でかつての恋人・サラ(平野綾)と再会し一線を越える。それを知ったサラの夫・マイケル(橋本さとし)。3人を見つめる謎のバーテンダー・ナレーター(濱田めぐみ)がからんで愛憎劇の予兆が漂う中、バーで殺人事件が起きる…。出演者は4人のみで、セリフは全て歌。濃密なロックミュージカルの幕が上がる。

 ◆中川 晃教(なかがわ・あきのり)1982年(昭57)11月5日、宮城県生まれの33歳。01年8月にシングル「I WILL GET YOUR KISS」で歌手デビュー。12月にはアルバムもリリースした。02年にミュージカル「モーツァルト!」で舞台デビュー。文化庁芸術祭新人賞など多数の演劇賞に輝く。以降、音楽活動をしながらミュージカル出演にシフトを移す。来年もすでに3本の作品に出演が決定。和製ミュージカルのけん引者の一人。

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