「くまモン頑張れ絵」で実感…漫画で心を癒やし、励まし合える国

[ 2016年10月29日 09:35 ]

 漫画家99人が熊本地震の被災地を励まそうと、自作の漫画キャラクターと熊本県の人気ゆるキャラ「くまモン」を一緒に描いた「くまモン頑張れ絵」120点余りが熊本県に寄贈された。

 「巨人の星」などで知られる川崎のぼる氏と、「はじめの一歩」の森川ジョージ氏らが21日、頑張れ絵を携えて熊本県庁を訪問した。

 川崎氏は「漫画を好きな方が多いようで、たくさんのメディアが集まって下さった。被災地の人が元気になってくれたらうれしい」と話した。

 頑張れ絵は、地震発生直後からSNSで盛り上がった漫画家発信のムーブメントだ。森川氏は仕掛け人の一人で「あしたのジョー」のちばてつや氏、「丸出だめ夫」の森田拳次氏らと、いち早く頑張れ絵を発表した。

 川崎氏は熊本県在住で自らも地震を体験。当初は「被災した方を間近に見ている者として、描く気になれない」と頑張れ絵運動を静観していたが、「自分が復興に貢献できるのは、描くことしかない」と被災地から力強い復興メッセージを発している。ちなみに「巨人の星」の左門豊作は熊本県出身だ。

 寄贈された頑張れ絵は、地震発生後にSNSやネット上で多くの人の目に触れた物以外に、新たに書き下ろされたものもある。川崎氏もスポニチ本紙で発表した絵以外に、新たに描き下ろしたという。川崎氏の盟友で「包丁人味平」のビッグ錠氏ら「貸し本漫画」時代の仲間の作品もあるという。

 頑張れ絵とともに驚いたのは、漫画家による寄せ書きだ。サインとともに、飛雄馬(巨人の星)、矢吹丈(あしたのジョー)、幕ノ内一歩(はじめの一歩)、巨人(進撃の巨人)らの顔がズラリと並ぶ。

 左端に飛雄馬、右端に矢吹丈が、それぞれ中央を向いて大きく描かれている。川崎氏は「ちばさんが“左向きのジョーしか描けない”って、紙の右側に描いちゃったから、僕は仕方なく左側に描いたんですよ」とジョーク交じりに話した。

 一般的に右利きの漫画家は、右向きの顔を描きにくいとされる。もちろん、ちば氏が右向きの顔を描けないはずはないが、左向きの方が描きやすいのは確かだ。日本の漫画を引っ張ってきた両巨匠が、そんな会話を交わしながら描いた寄せ書きだと思うと、一層味わい深い。

 ちなみに中央に描かれたくまモンの絵。プロの漫画家の絵に交じり、異彩を放つタッチが目を引くが、実はくまモン自身が描いたという。あの太い指でペンを持って描いたのなら上手いような気もしてくる…。

 大地震がもたらした被害は甚大で、今も多くの人が精神的に経済的に苦しんでいる。だが大好きな漫画のキャラがくまモンに寄り添い、元気づける絵が、被災した方の張り詰めた心を緩める場面もあると思う。

 くしくも頑張れ絵が熊本県庁に届けられた21日は、鳥取県で震度6弱の地震が起きた。日本ほど地震が起きる国はないかもしれない。だが、漫画で心を癒やし、励まし合える国もないだろう。

 頑張れ絵は同県の湯前町・湯前まんが館と高森町・湧水館で来年1月31日まで展示される。(記者コラム)

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2016年10月29日のニュース