「竜じぃ」天国へ 後輩にも愛され…吉本新喜劇50年以上支えた名脇役

[ 2016年10月8日 07:20 ]

5日に死去した井上竜夫さん
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 「竜じぃ」の愛称で親しまれた吉本新喜劇の名脇役、井上竜夫(いのうえ・たつお、本名井上龍男=いのうえ・たつお)さんが5日午前4時20分、高度肺気腫のために兵庫県西宮市内の病院で亡くなった。74歳。若手時代から老け役を演じ、「おじゃましまんにゃわ」などのとぼけたギャグで浪速のファンに愛された。

 50年以上、新喜劇を支えた名脇役が静かに人生の幕を閉じた。所属事務所によると、亡くなる前日の4日には、病室で妻ら家族とテレビを見ながら談笑。「また明日」と別れた後の深夜に容体が急変し、そのまま息を引き取ったという。通夜は6日、葬儀・告別式は7日にいずれも尼崎市内で密葬で営まれた。喪主は妻・井上美重子さん。

 若い頃に結核を患い、呼吸器系の疾患で入退院を繰り返していた。14年9月には公演中に体調不良を訴え降板。その後、復帰したが本拠地・なんばグランド花月での最後の舞台は15年2月16日。同年12月に大阪市内で行われた「吉本新喜劇まつり!2015」に登場したが、公に姿を見せたのはこれが最後だった。

 会見した新喜劇座長・川畑泰史(49)は、「昨日聞いたばかりで心の整理ができていない。小さい時から見てきた先輩。もっと一緒にやりたかった」と目を潤ませた。「怒った顔はほとんど見たことがない」と周囲が口をそろえる優しい人柄。座員に訃報が伝えられたこの日、楽屋は悲しみに包まれたという。

 松竹新喜劇を経て、63年に吉本新喜劇に入団。その後、漫才に転向した時期もあったが新喜劇に復帰した。「他人の家を訪れた際に「おじゃましまんにゃわ」と独特の節でうなり、舞台上の出演者がコケるという定番ギャグで人気を獲得。癒やし系のキャラクターを好演し、最近は和服姿で足元がおぼつかないおじいちゃん役を演じた。老け役は高校の演劇部時代に始め、住職だった父親の元に訪れるお年寄りを観察して磨いたことをスポニチ本紙に明かしていた。

 脇役だったが、新喜劇の“顔”でもあった。68年、スターだったボケ役の岡八朗さん(故人)が座長に就任した際、本人から直接、ツッコミ役をやってほしいとオファーされたことも。98年ロンドン、00年ニューヨークという新喜劇の海外公演にも参加。また、さまざまなエピソードをテレビや本で小籔千豊(43)ら新喜劇の多くの座長が紹介するなど、ファンだけでなく後輩にも愛された芸人だった。

 ◆井上竜夫(いのうえ・たつお、本名井上龍男=いのうえ・たつお)1941年(昭16)11月8日、兵庫県尼崎市出身。59年に松竹新喜劇の曽我廼家五郎八の元に入門し、60年に道頓堀中座で初舞台。63年に吉本新喜劇に入団。71年には谷しげるさん(75)=現猿回し師=と漫才コンビ「ざ・どっきんぐ」を結成もその後、解散して再び新喜劇に。90年には芸能生活30年記念で、実の娘で演歌歌手の井上実香(年齢非公表)とデュエット曲「ナイト大阪」を発売し、歌手デビュー。

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