湯を沸かすほどの熱い演技!杉咲花にのぼせてしまった

[ 2016年9月28日 09:20 ]

映画「湯を沸かすほどの熱い愛」の完成披露試写会で舞台あいさつに立った(左から)杉咲花、宮沢りえ、松坂桃李

 【佐藤雅昭の芸能 楽書き帳】新海誠監督(43)のアニメーション映画「君の名は。」が公開28日間で興行収入100億円を突破した。日本のアニメとしては宮崎駿監督(75)の作品以外では初の快挙。社会現象にもなっており、まだまだ数字を伸ばしそうだ。

 音楽を手掛けたのRADWIMPS。ボーカル、ギターを担当する野田洋次郎(31)は、俳優として出演した「トイレのピエタ」の演技で第70回毎日映画コンクールのスポニチグランプリ新人賞を贈られている。その「トイレ…」でヒロインを演じたのが杉咲花(18)で、彼女がいたから野田の演技もいっそう輝きを放った。実に達者な女優さんである。

 その杉咲の新作の公開が10月29日に控えている。宮沢りえ(43)主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」という作品だが、試写室にこれほどすすり泣きが漏れる映画に出くわしたのは久しぶりだ。かくいう筆者の涙腺も緩みっぱなしで…。

 ある日突然、余命2カ月という宣告を受ける宮沢演じる幸野双葉。あの世に渡る前にきっちりと“仕事”を済ませて旅立つ双葉の深い愛によって再生していく家族の姿を描いた一本。中野量太監督(43)のオリジナル脚本は、“出来過ぎ”と突っ込みたくなるくらいに練り上げられていた。随所に張られた伏線も見事で、あざとく泣かせようとはしていないのについ泣かされてしまう。「映画は脚本次第」ということを改めて確信させてくれる。

 役者が実に素晴らしい。宮沢の演技はこれまでのどの出演作よりも好きかもしれない。そして今回のコラムの“主役”杉咲花の湯を沸かすほどの熱い演技!底知れぬ力量には舌を巻くばかりで、おそるべしである。10月2日で19歳になる若手の期待株だが、順調な成長ぶりが頼もしい。

 杉咲に目を奪われたのは味の素「Cook Do」のCMだった。あの見事な回鍋肉の食べっぷりに瞬時にほれ込んでしまった。誕生日前日の10月1日に最終回を迎えるNHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」ではヒロイン一家の3姉妹の末っ子「美子」を好演し、作品に花を添えた。

 昨今、実力派のハイティーン女優が目立つ。昨年話題を呼んだ「ソロモンの偽証」の藤野涼子(16)と石井杏奈(18)、そして広瀬すず(18)も作品ごとに迫力を増す。公開中の「怒り」では、「よくぞここまで体を張った!」と心の中で拍手を送ったものだ。

 新人と呼ばれる時期は過ぎ去った。むろん賞がすべてではないが、杉咲も含め、これからは「主演女優賞」「助演女優賞」を良きライバルとして競っていくのだろう。日本映画界、楽しみが増えていく。(編集委員)

 ◆佐藤 雅昭(さとう・まさあき)北海道生まれ。1983年スポニチ入社。長く映画を担当。

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