「真田丸」草刈版昌幸の魅力 必然の描写「1つの人格」「生まれ変わり」

[ 2016年9月26日 08:00 ]

大河ドラマ「真田丸」で真田昌幸を熱演した草刈正雄。MVP級の存在感で作品を牽引した(C)NHK

 25日に放送されたNHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)第38話「昌幸」で惜しまれながらもこの世を去り、SNS上で“ロス現象”が広がっている、俳優の草刈正雄(64)が演じた天才武将真田昌幸。“草刈版昌幸”の魅力に迫った。

 再び武略、知略をめぐらす野望を抱きながらも、九度山(和歌山県)で年月を重ねる中で衰え、最期を迎えた昌幸。北条に付いたかと思えば、徳川に従い…というような処世術から「表裏比興の者」とも呼ばれたが、「真田丸」においては最期まで武田信玄への思いを貫きながら亡くなるという描き方をした。

 インターネット上には「昌幸は最後まで信玄の幻影を追う一生だったんだなぁ」「衣食住が足りて、特に仕事に煩わされることなく老後を暮らせると聞くと、一見いい老後に思えるかもしれませんが、昌幸はおそらく九度山で自分が生きているという実感が湧かない日々を送っていたんでしょうね。彼は波乱に満ちた戦国時代を生き延びてきたんですから」と昌幸の心情を思いやる声が続々と上がった。

 制作統括の屋敷陽太郎チーフプロデューサーは「ある意味(脚本の)三谷(幸喜)さんの手を離れて『真田丸』の昌幸はこうならざるを得ないという方向性に行ったというか。ここまで来ると1つの人格ですよね、草刈さんが演じる昌幸は。自然とこうなったということだと思います」と今回の「真田丸」がここまで作り上げてきた流れの中で、必然的に今回の描写に行きついたと説明する。

 草刈は1985年から86年にかけて放送されたNHK「真田太平記」で真田幸村(信繁)を演じ、30年後には奇しくもその親である昌幸役を務めた。「真田幸村をやって今度は父親をやるというのはなかなかない。草刈さんも『真田昌幸をやるために俳優になった』とおっしゃってました。こういうことを言うとご子孫に失礼かもしれないですが、真田昌幸の生まれ変わりなんじゃないかと思うことがありますね」(屋敷氏)

 「(『真田太平記』で昌幸役の)丹波(哲郎)さんならこうやるだろうなとか考えることもなく、丹波さんになってしまっている時もありますからね」という草刈。屋敷氏も「真田太平記もそうですが、真田十勇士にしろ日本人が数百年愛してきた物語じゃないですか。そういうもの全部が草刈さんに乗り移っている、うちのキャストを応援してくれている感じはありますよね」と話した。

 草刈は以前ブログで「役者って当たり役、ハマリ役って10年に1つあるかないかだと思うんですが。昌幸という役は40年に1つの役だと思っています」とつづっていたこともある。それだけ思い入れがある役だからこそ、撮影を終えた後には「やり切らせてもらいました。良い作品に恵まれました。ありがたかったですね」と感慨深げに振り返っていた。

 主役・真田信繁(堺雅人)に勝るとも劣らない存在感を発揮し続けてきた偉大な父の死去に「昌幸ロス」は避けられないところだが、屋敷氏は「信繁は昌幸のいろいろなものを受け継いできている。ふとした時に信繁が昌幸に見えるんですよね。昌幸の重要なところは信繁、幸村に引き継いでいかれます。そして三成的なものも大坂城で背負っていかなければいけない。幸村は昌幸であり、三成でもあります」と、昌幸だけでなく石田三成(山本耕史)も信繁の中で生き続けていることを強調した。

続きを表示

2016年9月26日のニュース