サルと人間の“いい距離”へ 成功するか?高崎山GPS作戦

[ 2016年9月17日 09:54 ]

 人工衛星で位置が把握できるGPS(全地球測位システム)装置。犯罪捜査や行方不明者の捜索などに使用されているが、今回、ニホンザルの餌付けで知られる高崎山自然動物園(大分市)にも導入された。

 大分市によると、サルに装着するのは初めて。まさかと思ったが、これまでは職員が自分の足でサルを追いかけていたという。

 同動物園といえば、今年は、雄ザル、雌ザルそれぞれの人気No・1を決める「TNZ人気ザル(♀=メス)、イケメン(♂=オス)選抜総選挙」を実施。昨年は、英国王女にちなんだ命名が注目された。話題となることも多く、何頭かのサルの名前を知っているだけに、どんなサルにGPSを装着したか気になった。

 高崎山にはB群(約730頭)、C群(約790頭)合わせて約1520頭のサルが生息している。市によると、そのうち、GPSをつけたのは、8歳以上のメス6頭で、B、C群それぞれ3頭ずつ。オスは成長すると群れを離れる習性があるが、メスは群れにとどまるため、メスのみに取り付けられた。

 B群は、ハニー(推定19歳)、マオ(同14歳)、もう1頭に名前はないという。一方、C群はオンブ(同13歳)、アンニン(年齢不明)、ダイゴロウ(同)。何か理由があるかのかと思ったが、8月29日から9月1日までに捕まえることができたサルに装着したという。

 来年8月まで約1年間、生息域や季節ごとの移動状況を追跡。サルたちの位置情報のデータと山の植生を照合することで、どの時期に何を主食にするかなどを調べ、今後の保護管理に役立てられる。1年後にGPSを無事に外してあげられるか少し心配なところだ。

 サルは、年々増えており、山の植生への影響のほか、近隣の農作物への被害が出ているとのこと。サルによる農作物被害などに対する同園の2015年度の損失補償額は、約1180万円。14年度の約500万円を大きく上回っている。

 高崎山周辺には、高崎山“所属”ではないサルも生息している。一体、“誰”が農作物を荒らしているのかは不明だ。

 今年は、クマによる人的被害が東北地方を中心に相次いでいる。秋田県では、5月から6月にかけて計4人が熊に襲われて死亡した。もうすぐ実りの秋。この時期は人間も動物も食欲が増すらしい。農作物被害も人的被害も、人と動物のエリアが交錯して発生する。高崎山のGPS作戦が成功すれば、人とサルとの絶妙な距離感を示し、お互いにとって“おいしい秋”に導いてくれそうだ。

続きを表示

2016年9月17日のニュース