「こち亀」連載40年で終了…秋本治氏「おめでたい時に終わるのが」

[ 2016年9月4日 05:30 ]

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」連載40周年記念完全描きおろし巨大絵巻物奉納式で連載終了を発表した秋本治氏

 週刊少年ジャンプ(集英社)で1976年(昭51)9月から連載を続けてきた国民的漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が、17日発売の同誌で完結することになった。3日、東京都の神田明神で行われた同作の絵巻奉納式で、原作者の秋本治氏(63)が発表した。秋本氏は「いつまでも描きたいが、おめでたい時に終わるのが一番」と声を上ずらせた。

 東京の下町を舞台に、ハチャメチャ警官・両津勘吉の巻き起こす騒動を描いてきた“こち亀”が、連載40年で終わりを迎える。17日発売の週刊少年ジャンプに最終回が掲載され、同日、最後の単行本200巻が発売される。

 神田明神は作品に何度も登場するゆかりの場所。長さ約8メートルの「こち亀絵巻」を奉納した直後の会見で秋本氏は「びっくりさせて申し訳ない。だが、おめでたいときに終わるのが一番。両さんはお祭りが大好き。みんなに祝ってもらい、スッと消えるのが両さんらしい大団円」と話した。体調などの問題ではないという。「新作に挑戦したい」とも語った。

 一人の作家が描く漫画では、世界に例のない単行本200巻。累計発行部数は1億5000万部以上だ。連載終了の決断がよぎったのは、200巻発売と連載40周年到達が現実味を帯びてきた約1年前という。「迷いながら相談を持ちかけた」と話を進めてきた。

 会見序盤では「300巻への意欲は?」「最終回の構想は?」などの質問も飛んだ。秋本氏は、会見の最後に連載終了を明かすと決めていたため「4年後の東京五輪では(夏季五輪が開催される年に登場するキャラクターの)日暮も出したい」などと答えていた。

 こち亀絵巻の質疑応答にひと区切りがついた頃合いを見計らって、終了を宣言。「いつまで続くのかと楽しみにしてくださる方もおられる中、心苦しい。いつまでも描き続けたい気持ちはある」と、時折声を上ずらせた。

 休載は一度もなかった。だが初代編集担当だった集英社の堀内丸恵社長ら歴代担当10人の前で「週刊少年誌で40年も描かされる…いや描かせてもらいました」と冗談交じりに語り、苦労をにじませる場面もあった。

 瓶子吉久編集長は「こち亀と両さんは日本の宝。週刊連載の枠を超えて生き続ける」と、読み切り掲載などの可能性は否定せずに「今後の展開の詳細は17日発売号のジャンプで発表する」とした。秋本氏は4日放送のフジテレビ「ワイドナショー」(前10・00)でも心境を語る。

 ◇こちら葛飾亀有公園前派出所 東京の下町を舞台に主人公で警察官の両津勘吉らが巻き起こす、笑いあり人情ありのギャグ漫画。ギャンブルやゲーム、プラモデルなど娯楽のほか、はやり物や時事ネタを題材に物語が展開することも多く、マニュアル漫画の側面もあった。12年5月にオープンした東京スカイツリーは、建設中から漫画にたびたび登場したほか、35周年記念としてAKB48との読み切りコラボ漫画が掲載されたこともある。

 ▼「ゴルゴ13」の漫画家さいとう・たかを氏 ご苦労さまと言うしかない。連載があれだけ長くなると、作品が自分のものではなくなるので、やめるにやめられなくなるものなんです。(こち亀は)雑誌の顔になっていましたから、よく決断できたなあ。寂しいのと、うらやましいのと、不思議な気持ちです。

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