史実昇華させる「真田丸」三谷脚本の凄さ“大河はファンタジー”

[ 2016年7月23日 10:00 ]

沼田城を巡り板部岡江雪斎(右)と論戦を交わす真田信繁(中央)。左は本多正信(C)NHK

 大河ドラマでありながらサスペンスや法廷劇を描くなど、一風変わった手法を使っているように見えるNHKの「真田丸」(日曜後8・00)。時折現代劇のようにも見えるのは、三谷幸喜氏(55)の脚本がなせるものなのか?制作統括の屋敷陽太郎チーフプロデューサー(CP)に聞いてみた。

 豊臣秀吉を中傷する落書きが見つかり、主役の真田信繁が犯人探しをした第20回はさながらサスペンスであり、沼田城をめぐり真田家と北条家が秀吉の前で主張し合った第22回は法廷劇と呼ぶのにふさわしい内容。どちらも三谷氏が得意とするタイプの脚本で、いわゆる“大河ドラマらしさ”からは離れているようにも見えるが――。

 「意外と大河っていつもアバンギャルドだったんだけどなって思うんですけどね。何をもって『大河っぽい』と言うのかわからないですが、なぜかオーソドックスで古めかしいイメージがあるんですよね」

 屋敷CPが「大河ドラマらしくない」と(放送時に)同様に受けとられた例として挙げた作品は、「真田丸」よりもずっと言葉づかいや所作が現代的な「草燃える」(1979年)や、竹中直人(60)が「破天荒な」豊臣秀吉を演じた「秀吉」(1996年)。「利家とまつ~加賀百万石物語~」(2002年)も現代的だったという。

 「真田丸」は大河らしくない部分も多いのでは?そしてそれは今回三谷氏が脚本を手掛けているため?という仮説は外れたものの、屋敷CPは別の部分に三谷氏の凄さがあると話す。

 「沼田裁定は、実際に真田家と北条家、それぞれが秀吉のところに交渉に行っているんですよ。『沼田はうちのものだ』と。真田家、北條家が秀吉の前で“裁判”をしたという場は実際にはなかったと思うんです。でもそれぞれが交渉に行って、両者が分け合ったという結果になっている。それぞれの交渉を合わせて裁判劇みたいに見せようというところは三谷さんのアイデアが凄いところですよね」

 実際に起こった歴史をベースに、フィクションを織り交ぜる三谷氏の巧みさが散りばめられた「真田丸」。歴史物は制約が厳しそうなイメージがあるが、屋敷CPは「逆に一番自由がきくんですよ、だってファンタジーじゃないですか。みんなコスプレですよ。今ありえない格好をしてやっているわけですから」と説明。三谷氏の脚本については「僕たちも『今度はどんなものが来るんだろう』と楽しみです。あくまでも真田目線というのは首尾一貫して書いてくださっていて、(今後も)真田目線の関ヶ原前夜、そして関ヶ原に至るところは、台本読んでいてもうれしかったですね」と手応えを口にした。

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