さかなクン、感性育んだ母の愛「自由に泳がせてくれた」

[ 2016年7月22日 09:00 ]

初の自叙伝「さかなクンの一魚一会~まいにち夢中な人生~」を刊行した、さかなクン

 魚博士の枠をギョギョッと飛び越え、マルチに活躍するさかなクン。22日に刊行した初の自叙伝「さかなクンの一魚一会~まいにち夢中な人生~」(講談社)では、魚をはじめとする生き物や友人との出会いが生き生きとつづられている。東京海洋大学の客員准教授にして、名誉博士。自身の好きを極めながら“魚道”を突き進んできたその裏には、常に母親の温かいサポートがあった。

 魚に関する豊富な知識やイラストはもちろん、バスサックス演奏といったエンタメ界でも存在感を示すなど幅広い分野で活躍。著書も多く発表しているが、自叙伝となると意外にも今回が初めて。オファーが来た際には「ギョギョギョッ!」と驚いたと同時に、これまでの道のりを振り返り「あんなこと、こんなことがあったから今があって、ありがたい気持ちでいっぱい」とさまざまな出会いへの感謝の思いを一層強くしたという。

 「トラック・妖怪・タコ・さかな」。現在に至るまでの、自身が夢中になったものの変遷をこう表現する。興味を持ったらとことんのめりこむ。そんな一途な思いを常に支えてきたのが母親。著書には、息子がやりたいことを全力で応援する母の深い愛情がにじみ出ている。

 最初にハマったトラック。中でもごみ収集車に興味を持った時には、近くの役所に隣接している清掃車の車庫にサプライズで連れていってくれたといい、そこから探求心への歩みがスタート。また、タコに夢中になると、好きなだけ観察できるようにとマダコを鮮魚店で毎日購入。おかげで、食卓には1カ月タコ料理が並ぶこともあった。「明るくて感動派。人が喜ぶことが何より好きな母親なんです」。魚ばかりで学校の成績が下がり、担任の先生から忠告を受けても子供の気持ちを常に優先。「思う存分やりなさいって。自由に泳がせてくれて、背中を押してくれました」。この母なる豊饒の海が、さかなクンの心身を、そして感性を育んだ。

 「好きだな、楽しいなって思いを強く持ち続けると、いつか大きな機会につながるんです」。多くの魚との出会いだけでなく、神様のように尊敬した漫画家の水木しげるさんとは生前2度会うことができ、中学時代に「水槽学」と思い込んで「吹奏楽部」に入部し、以降バスサックスを続けたことが、憧れの東京スカパラダイスオーケストラとのCM共演へとつながった。絶滅種とされていた「クニマス」の生息確認に携わったのもその一つ。すべてが「大きな宝物」だといい「奇跡や偶然と言ったらそれまでですが、これらは強く思い続けたことへの、自然からのプレゼントなのかもしれません。本当にありがたいです」

 好きなものがない、見つけられない。思い続けるものがないという子供たちも多くいる。そんな時は「大人が目を配ってほしい」と話す。「自分にとってかけがえのないものだと気付いていないだけのことも多い。“これ好きなんだね”“面白いの?”っていう親からの問いかけが、気付きへとつながるのですから」。好き…。その先に待っているものが分かるからこそ、言葉にも熱さが宿る。

 そんな、さかなクンがこの先、出合ってってみたいものは「シーラカンス」だ。引き続き、日々勉強をし、好きな絵を描き、そして思いを強く持つことは変わらない。「会いたいな。会えるかな。ギョギョギョッて感動へ、魚の神様が導いてくださるかな」。さかなクンの「一魚一会」の旅は続いていく。

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