八名信夫 悪役ならではの“世直し”喫煙女子中学生にコワモテで「やめろ!」

[ 2016年7月17日 10:05 ]

インタビュー中に満面の笑みを見せるす八名信夫

 泣く子も黙るコワモテで「悪役商会」を率いる八名信夫(80)。プロ野球の投手から俳優に転身し、大柄な体格と圧倒的な迫力で名悪役として確固たる地位を築いた。それを支えたのは、東映時代の先輩で2014年に亡くなった名優、高倉健さん(享年83)の教え。悪役のイメージを生かして頑固オヤジを体現し、講演活動などで“世直し”にも情熱を注いでいる。

 83年にコワモテ俳優を集めた劇団「悪役商会」を結成。90年から始まったキューサイ青汁のCM「まず~い、もう一杯!」も代名詞の一つになった。全国で精力的に講演活動も行っている。

 「ある時、地元の岡山の駅前でタバコを吸ってた女子中学生に“やめろ!”って怒鳴ったの。悪役の芝居が役に立って、向こうは真っ青だった。腹が立ったのが、周りに大人がいたのに注意しない。昔は知らないオヤジにげんこつされたけど、頑固オヤジが世の中にいなくなった。それで、他人の子供も愛情を持って叱って守ってやろうと思い、講演しています」

 私生活では一度結婚経験がある。「近所で子供たちに野球を教えていた時に結婚しました。女房に2人の連れ子がいて、子供も大きくなったので三十何年前に別れて、それ以来独身。今は20人くらいいる劇団員が子供みたいなもの。わんぱくなヤツもいるしね」

 若い頃から大の車好きで、ポルシェのクラシックカーなどに乗ってきた。現在の愛車はベンツで「今も運転しますよ」。街歩きも好きで、気になる店をのぞいて一風変わった物を買うといい「壺(つぼ)や置物、刀とか使わないものばっかり」と笑った。

 80歳になり、新たな挑戦もしている。映画「おやじの釜めしと編みかけのセーター」で、脚本、主演だけでなく初めて監督も務めた。家族の絆や人情を描く作品で「俳優を60年近くやってきて何か残したいと思った。世の中に思いやりが消えつつあるので、思いやりのある映画を自分の力で作り、全国の人に無料で見てもらう」と力を込める。撮影中に腰を痛めブロック注射を打ちながら乗り切り「闘いながらの撮影でした」と明かす。秋から無料上映を行う予定。「全国を回って反響を見たい」と語る顔は、気迫に満ちていた。

 ◆八名 信夫(やな・のぶお)1935年(昭10)8月19日、岡山市生まれの80歳。明大を中退し、東映フライヤーズに入団。プロ野球3年間の通算成績は15試合に登板し、0勝1敗。防御率3.86。主な出演作は、映画は「昭和残侠伝」「網走番外地」「不良番長」「仁義なき戦い」シリーズ、ドラマはNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」、連続テレビ小説「純情きらり」など。14年にソフトバンク対日本ハム戦で始球式に登板した。

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