【矢野誠一氏 永六輔さん悼む】教わること多かったラジカル発言

[ 2016年7月12日 10:13 ]

78年、本牧亭の高座で一席を披露する永六輔さん
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永六輔さん死去

 最後にお会いしたのは昨年の暮れ。永さんのラジオ番組に呼ばれたのが別れとなった。永さんは1969年に12人でスタートした俳句の会の創立メンバーの一人。そこからの長い付き合いだったが、これで創立メンバーは僕と柳家小三治の2人になってしまった。

 作詞家としても大変なヒットメーカーで、ベストセラー作家でもあったが、世の中の動きが釈然としない時にがぜん発したラジカルな発言が僕には強く印象に残る。自らの疎開体験からなのか、「尺貫法の復活」を訴えたり、「米穀通帳は無駄遣いだ」と主張したり、いろいろ教わることも多かった。

 「大往生」が大ベストセラーとなり、岩波書店からサイン会を頼まれると、永さんは都会の大きな書店での開催は嫌がり、夫婦2人だけでやっているような地方の小さな書店を選び、マイクロバスで回っていた。そんな人だった。お坊さんの息子だから説法もうまい。俳句仲間を率いて全国行脚もしたが、あまり行ったことのない場所に連れて行かれ、地方の問題をよく教えてくれたものだ。あのセンスの凄さには舌を巻いた。

 安らかで眠るような最期だったと聞く。立派な大往生だ。(演劇評論家)

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2016年7月12日のニュース