クドカン「ゆとり」描いた理由 「ネガティブな印象ばかりだが良いところある」

[ 2016年5月29日 10:00 ]

「ゆとりですがなにか」に出演する岡田将生(右)と柳楽優弥(C)日本テレビ

宮藤官九郎インタビュー(上)

 人気脚本家“クドカン”こと宮藤官九郎(45)が手掛ける日本テレビ「ゆとりですがなにか」(日曜後10・30)が、29日放送の第7話からいよいよ佳境へ差しかかる。岡田将生(26)演じる主人公たちのリアルな苦悩が視聴者の共感を集め、高い評価を得ている。なぜ「ゆとり世代」をテーマにしたのか。宮藤は「ネガティブな印象ばっかりですが良いところもある」と語った。

 ――「ゆとり世代」をテーマにした理由を教えてください

「ゆとり教育とは何なのかと、ゆとり世代の人に話を聞いたり本やネットで調べて、自分なりのフィルターを通して伝えたかった。最近、若い世代の人たちと接したら違和感を持ったことがありました。彼らと仲良くなりたくて飲み会に誘ったのに迷惑そうな顔をされた。何でだろうと思いました。実際に飲みに行って会話がかみ合わないときに自分がどんどん年寄りになっている気がして…」

 ――脚本を書く前は「ゆとり世代」についてどう思っていたのですか?

「上司から飲みの誘いを受けると『強制ですか』と答える場面を第1話で描きましたが、無駄なことを嫌がるというか、無駄なことをしないようにしようとする世代かなと。僕は無駄なことをたくさんしてきて。当時、先輩とかに飲み会に誘われても無駄だという意識はなくて。いま考えればあの時間は無駄だったなとは思いますけど(笑い)、なんで無駄だといま思うのかって考えたのですが、結局答えは出なかった。一番しっくりきたのは自分が下の世代に感じている、よく分からない『怖っ』という感覚。そして、彼らのことを少しでも理解しようと思ったときに便利だったのが『ゆとり』という言葉だった。第7話にそのやり取りが出てくるのですが、『ゆとり』とひと括りにして分かった気にならないと怖かったのかもしれません」

 第6話では松坂桃李(27)演じるゆとり世代の小学校教師・山路が「ゆとり教育」について児童に教える場面があった。学習障害を抱えている転校生・大悟がどうすれば算数でひっ算ができるか考えさせ、児童からは目が悪い子が眼鏡をするように電卓を使えばいいというアイデアが出る。大悟は算数の授業だけ別の教室で受けることになるが、山路は「みんなと一緒に社会に出るために必要な措置。電卓を使ってよい日が来ると思う。それが本当の平等。本当のゆとり教育だと思います」と伝えた。

 ――山路のセリフは、宮藤さんが台本を書き進めながら「本当のゆとり教育とは」と思ったことなのでしょうか?

「ゆとりってネガティブな印象ばっかりですが、ゆとり世代の人とかに話を聞いたり調べたりしたら、良いところもあるじゃないかと思った。自分たちが子供の頃に学習障害の子供がいなかったはずがない。表面化していなかっただけで、その子たちはとても辛かったと思う。バカだと言われてただけで、なぜ勉強が分からないのかという原因を大人が究明していなかったかもしれない。それがいまは電卓を使うことを検討されるようになったり、ちゃんと対処できるようになっているのだなと。教育体制が変わったのは、ゆとり教育のいいところなんじゃないかなと思います」

 ――「ゆとり世代」じゃない登場人物のマイナス面も描かれています

「ドラマはゆとり世代から入っていますが、その世代より下もひどいし、上もひどいですよと。大人だと思っていた人たちが大人じゃなかった。世代に関係なく、人にはマイナスな面がありますよという話です」

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