芸歴制限なし「R―1ぐらんぷり」の意義 新しい笑いの発見と門戸

[ 2016年3月6日 09:00 ]

「R―1ぐらんぷり2016」の決勝進出者9人(C)カンテレ

 第14回を迎える1人話芸日本一決定戦「R―1ぐらんぷり2016」は6日、決勝が行われ、午後7時からフジテレビ系で生放送される。昨年はスタジオセット、今年はロゴが女性目線で柔らかいイメージに変更。その中、決して変わらない大会コンセプトがある。そして「R―1」の意義とは。第1回から携わる制作のカンテレ・水戸徹プロデューサーに聞いた。

 大会スタートから不変のフレーズがある。「1人でしゃべれば、何でもOK」――。水戸プロデューサーが解説する。

 「R―1は1人で舞台に上がれば、本当に何をしてもいいんですよ。そこに制限は加えていないですね。例えば、芸人さんが『決勝でこういうネタをやりたい』と言った時、私たちスタッフが『それは無理です』というのは絶対に言わないでおこうと。もちろん放送コードや一般常識から逸脱したことは許されないですが、本人がおもしろいと思い、それがテレビで放送可能なものなら、最大限、努力しようと。それが『1人でしゃべれば、何でもOK』。脈々と続いています」

 昨年の第13回大会。お笑いコンビ「COWCOW」の善し(41)が復活ステージ(敗者復活戦)から決勝に進んだ。善しのネタはカフェの店頭などにある縦長の大きなモニターを使ったもの。善しの決勝進出が決まったのが午後4時半。決勝の生放送は午後7時から。復活ステージが行われた東京・東銀座の時事通信ホールから、本人に分からないよう、台場のフジテレビにモニターを運んだ。スタッフは舞台裏で「電源用意!」などと大わらわだったが、間に合った。「モニターは使えません」とは決して言わない、度量の大きさが求められる。

 漫才日本一決定戦「M―1グランプリ」が始まった翌年の2002年、1人芸を盛り上げる大会として開催。「R―1」の「R」は落語から採った。第1回の決勝進出者は12人で、1人のネタ時間は12分。放送時間は90分しかなく、編集でネタをカットした。放送は関西ローカルだけ。そこから徐々に知名度を上げ、規模を大きくし、第3回から全国ネット、第6回から生放送、第7回からゴールデンタイムに進出した。その間も「コンセプトは変えない」と守った。

 「芸人さんたちはドンドン新しい笑いを作り出して提示してくれるので、どこがおもしろいのか、スタッフは常に新しい気持ちと新しい頭で理解して、どう表現したらテレビとしておもしろくなるのか考えないといけません。『お笑いはこうでないといけない』とか『R―1はこうでないといけない』ということではなく、新しい笑いに対して最高の舞台を用意するにはどうしたらいいのか、スタッフが考え続けることが一番大事だと思いますね。それは『1人でしゃべれば、何でもOK』というコンセプトにつながっていて。毎回、新しい笑いが出てくる。『この笑い、分からない』と言っていたら、付いていけないですから。『この笑いのおもしろさはどこにあるのか』ということを常に考える気持ちと頭を持っておかないと。これも第1回から続いていることだ思いますね」

 水戸プロデューサーの印象に残るのは第2回、第3回と決勝に進んだヒロシ(44)。お笑いは基本的に明るいものだと思っていたが「ネガティブにつぶやいて、それがおもしろいというのにビックリしました」。新しい笑いは、ともすれば、マニアックさが同居するが、「R―1」はそれを発見し、柔軟に認め、受け止める。さらに「R―1」には芸歴制限がない。エントリー数は毎回、増え続け、今回は最多3786人。第1回の351人から10倍以上になった。水戸プロデューサーは「芸歴制限がない限り、毎回、新しい人が泉のように湧いてくるという自信は第1回からありました」。つまり「R―1」は新しい笑いに門戸を開き続ける。そこに存在意義がある。

 カンテレが放送する「上方漫才大賞」は昨年4月、第50回を迎えた。「R―1ぐらんぷり」の今後について、水戸プロデューサーは「R―1も50回以上やってほしいと思いますね。R―1は1年1年が勝負。延々50回、勝負してほしいですね」と展望。お笑い界の発展を願った。

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