勘三郎さんの思い継ぎ…勘九郎&七之助「四谷怪談」新演出で再上演

[ 2016年2月22日 05:30 ]

「四谷怪談」を再上演する中村勘九郎(右)と中村七之助

 歌舞伎の中村勘九郎(34)七之助(32)が、東京・渋谷のシアターコクーンで「四谷怪談」(演出・串田和美、6月6日初日)を上演することになった。亡き父の十八世中村勘三郎さんの思いがこもった「コクーン歌舞伎」。15回目となる今回は、そのスタートとなった思い出の演目だ。

 「若い人たちにも歌舞伎をどんどん見てもらいたいよね。そのためには新しい芝居を作らなきゃ」。94年、勘三郎さん(当時勘九郎)は、熱い願いを込めて渋谷の街で歌舞伎を始めた。演出家の串田和美氏と二人三脚。その第1弾が、鶴屋南北の名作「東海道四谷怪談」だった。本火、本水、泥沼などを使い、臨場感たっぷりに描かれた、この世界が「コクーン歌舞伎」の原点だ。

 当時、勘九郎は12歳、七之助は11歳。2人とも客席から舞台上でエネルギッシュに動き回る父の姿を追い掛けた。「私たちも身震いしながら何度も見てました。きのうのことのように覚えてます。コクーン歌舞伎は父が残してくれた大事な宝箱のようなもの。毎回何が飛び出すか分からない宝箱を兄弟で大切にしていきたい」と気持ちは同じだ。

 「忠臣蔵」の外伝として書かれた「四谷怪談」には2つの物語がある。「南番」と言われるお岩の怪談話、そして、取り上げる機会の少ない直助とお袖の悲劇に焦点を当てた「北番」。今回、上演されるのは、06年に「北番」をベースに構成された芝居に、さらに新しい演出を加えたものになる。

 実の妹と知らず人を殺してまでお袖を手に入れようとする直助に勘九郎が初挑戦。「前回は父が演じていた役。僕の目には父の姿が、耳には父の声が今でも強く残っています。その時、お袖を演じていた七之助にもこれからいろいろ聞きたいですね」。一方の七之助は「同じお袖の役ですが、いろんなところを新しくすると聞いてます。新たな気持ちで皆さんと一緒に作り上げていきたい」と話している。

 お岩を演じるのは中村扇雀、伊右衛門は中村獅童、コクーン歌舞伎には欠かせない役者の片岡亀蔵、笹野高史らも顔をそろえる。

 ◇「四谷怪談 北番」 伊右衛門は出世のため、妻のお岩を毒殺。お岩の妹お袖は父や夫を殺され、さらに姉の命まで奪われたことを聞かされ、敵討ちを決意。そこへ直助が夫婦になれば助太刀すると申し出て泣く泣く承諾する。ところが、お袖の夫を殺害したのは、実は直助。さらには直助とお袖が実の兄妹であることも明らかになる。登場人物のそれぞれの人間模様が見どころ。

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