滝藤賢一 師・仲代達矢に憧れ、深いシワ役に深み

[ 2016年1月24日 10:06 ]

師の仲代達矢のようなシワの深い俳優に憧れて…見事なシワ顔を披露する滝藤賢一

 大ヒットドラマ「半沢直樹」で注目を集めてから3年。俳優の滝藤賢一(39)は今年も出演作が目白押しだ。どんな作品でも役作りを徹底し、強烈なインパクトを残す。私生活では4人の子供がいる父親で、妻と夜な夜な取り組む“共同作業”についても明かした。

 声もアクションも大きく、丸い目をくるくる動かしながらよくしゃべる。このインタビューの題字を書いてもらうと、筆ペンの墨汁を飛び散らせ、色紙に収まらないほどダイナミックに熱筆。映画「はなちゃんのみそ汁」(公開中)の舞台あいさつでは、汗をかきながら「安心してください。ハンカチがありますから」と、人気芸人・とにかく明るい安村(33)のネタで笑いを取るサービス精神。これまでの役柄から繊細なイメージを持っていたが、素顔は“規格外”のキャラクターで「僕ね、面白いんですよ」と満面の笑みを見せた。

 高校卒業後に「監督志望」で上京したが、「“なんちゃって”の志望。映画の世界に行けたら格好いい気がするじゃないですか。そんなノリでした」と明かす。仲代達矢(83)が主宰する超難関の「無名塾」への応募動機も振るっている。「授業料がタダだったから。仲代さんに怒られそうだけど、お金がなかったし、1000人受けて合格するのは数人なので受かると思ってなかった」。その狭き門を突破し98年に入塾。07年まで在籍し、演技の基礎を叩き込まれた。

 「ギプスだと言われて、みんなが同じタイミングでしゃべって呼吸して足を一歩出して、というのをやっていました。仲代さんは“それでも出てくるのが個性だ”と。“自分だったらこうするとなぜ考えない”と言われ続けて、40歳を前にしてやっと、人の芝居を見て俺だったらこうやると思うようになりました」

 昨年のNHKドラマ「破裂」で仲代と共演。退塾後の共演は、14年のWOWOW「罪人の嘘」に続き2度目だが「そりゃもう、心臓をわしづかみにされた状態で芝居をするみたいでしたよ」と振り返る。激励の意味だろう、すれ違いざまに肩をバンと叩かれたという。「怖いですよ。あんな人はいない。仲代さんにはなれないし、仲代さんが目標なんてとてもじゃないけど言えないです」

 師に憧れ努力したことがある。「目をぎゅっとつぶったりして、シワを増やすのを頑張りました。仲代さんみたいにシワが深い俳優に憧れるから」。表情を変えるたびに目尻に寄るシワが、役に深みを加えている。

 13年のTBS「半沢直樹」で主人公と同期の銀行員を演じブレーク。出世コースを外れ葛藤する役どころで、鬼気迫る表情が話題を呼び「いまだに“半沢の人だ”って言われます」と反響の大きさを実感。翌年テレビ東京「俺のダンディズム」でドラマ初主演を果たすなど躍進し、今年も複数の出演映画の公開が控える。半沢直樹には「役者としてのステージを上げてもらって、芝居をやる環境を変えてもらった」と感謝する。

 役作りの徹底ぶりで知られ、末期がん患者を演じたTBS「S―最後の警官―」(14年)では、1話だけのゲスト出演にもかかわらず1カ月で10キロ減量。そのストイックさに驚かされるが「じゃなきゃ何をやるの?」と言い切る。「1カ月ほぼ何も食べないってやっぱりきついし、セリフだって簡単に覚えられるわけじゃない。現場に行ったら自分が何を求められてるのか、特に脇(役)だからいち早く察知して、ものすごく神経を働かせる。楽しいと思う?苦しいだけよ」。俳優業への思いをそう表現するが、言葉とは裏腹に、充実の表情が浮かんでいた。

 09年に無名塾時代の後輩女性と結婚。6歳、4歳、3歳の息子3人と、1歳の娘の4児の父。運動会では発声で培った大声で応援し、子供と公園で遊ぶ良きパパだ。とりわけ1歳の娘を溺愛し「かわいいなんてもんじゃない。“お嬢”とか“姫”って呼んでいます」と目尻を下げる。

 妻に対しても「すごい女性だなって思う。とても恵まれた健康な体を持って、命を4回も生み出したのはすごいこと」と感謝。

 趣味は、夜に妻と筋トレすること。「洗濯を終わらせて2人で腹筋してます。出産で体形が変わっちゃうから、僕が(妻の)体をぐーっと押したりしながら内転筋や腹筋を鍛えています」。5人目については「できればいいですけど」と笑顔。父としても俳優としても、まだまだビッグになりそうだ。

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