加藤健一 若者に伝えたい生き抜く力「自分の将来考えるきっかけに」

[ 2016年1月21日 09:50 ]

「母と暮せば」で男優助演賞に輝いた加藤健一

2015年毎日映画コンクール

 【男優助演賞 加藤健一】「母と暮せば」の演技で男優助演賞に決まった加藤健一(66)は「賞は考えていなかったのでびっくりしました」と照れくさそうに笑った。舞台での受賞歴は数知れないが、映画では初。2年先までスケジュールが詰まっている超多忙な演劇人。「椿姫」以来27年ぶりの銀幕登場となれば、それも致し方ないところだ。

 舞台を見に来た山田洋次監督から楽屋で直接口説かれた。「大好きな井上ひさし先生の“父と暮せば”の対になる作品。スケジュールを縫ってくだされば断る理由は何もない」と引き受けたが、地方の公演先と現場の往復は実際綱渡りだった。

 原爆投下から3年後の長崎を舞台に、母親と亡霊になって現れる息子を描いたファンタジー。加藤は吉永小百合扮する母親への思いを秘めながら闇物資を運んでくる「上海のおじさん」役を圧倒的な存在感で演じた。「たとえ法を犯してでも生き抜いていく力の象徴の役として書いてくれた。山田監督の筆の力と演出が全てでした」と感謝し、どこか渥美清さんが演じた寅さんに似た人物像には「監督の中に、そういう人間があるんでしょうね」と目を細めた。

 きな臭くなってきている世の中だからこそ若い人に見てほしいと願う。「テロが向こうからやって来るんでなくて、日本から招くようなことをしている感じがする。若者には自分たちの将来のことを考えるきっかけにしてほしい」と訴えた。

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2016年1月21日のニュース