塚本晋也監督 市場初「監督」&「主演」W受賞

[ 2016年1月21日 09:17 ]

男優主演賞と監督賞の2冠に輝いた塚本晋也監督

2015年毎日映画コンクール

 【男優主演賞・監督賞 塚本晋也】「監督」と「主演」のダブル受賞は初の快挙。戸惑いがちの塚本監督だが、その表情には隠しようのない喜びがにじんだ。02年に「とらばいゆ」「殺し屋1」などの演技で助演賞を受賞。「今回は主演賞。過去の資料を見ると、佐分利信、三船敏郎、三國連太郎…。申し訳ない気持ちでいっぱいです」と恐縮した。

 大岡昇平の小説を自主製作の形で映画化。第2次世界大戦末期のフィリピン戦線。結核を患って部隊を追放された田村一等兵(塚本)を軸に極限状態に追い込まれた人間たちをリアルに描いた。

 「高校の時に読み、何十年も作りたかった映画。お金はないが、“いま作んなきゃ次にチャンスはない”という思いでがむしゃらに作りました」

 役者としては受けの演技に終始。「劇中で起こるあまりに異常な出来事と、観客をつなぐ狂言回しの役をできればと思いました」と語ったように、大写しになる塚本の顔が鏡の役割を果たした。

 映画化に向け30代で具体的に動きだし、45歳の05年には戦争体験者に取材し、レイテ島にも出向いた。「そういうものが全部血肉になってます」の言葉に実感がこもる。

 「大きく作って大きく発表したいと思い、主演は知名度があって、尊敬できる俳優さんを思い描いていました」と話したが、実現を見ず。ならばとアニメ化も真剣に考えたが「何十年もやりたかったものなのに本当にそれでいいのか」と自問自答。結局は自分を主役に据え実写で突き進んだ。

 戦後70年、節目の公開に執着した。「心配な状況になっている。取材した戦争体験者の方も95歳まで生きましたが、亡くなられた。不老不死と思われた水木しげるさんも逝ってしまった。戦争のことを辛口でしゃべる野坂昭如さんみたいな方もだんだんいなくなる」

 だからこそ多くの人に見てもらいたいとの一念で全国を回った。既に70以上の劇場で上映されているが、賞が弾みとなってさらに増えそうだ。

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2016年1月21日のニュース