CD不況下のレコード大賞の意義 世代つなぎ音楽業界を活性化

[ 2015年12月28日 10:00 ]

CD不況下の日本レコード大賞の意義は?(昨年の模様から)(C)TBS

 年末恒例のTBS「第57回輝く!日本レコード大賞」は30日午後5時半から生放送される(一部地域を除く)。老若男女、どの世代にも親しまれる国民的ヒット曲が生まれにくくなった近年、日本レコード大賞(以下レコ大、主催日本作曲家協会)の意義はどこにあるのか?

 CD不況が叫ばれて久しいが、配信やライブ(コンサート)など、音楽はより身近なものになっていると言える。ただ、音楽の聴かれ方はよりパーソナルになり、世代を超えるようなヒット曲が出にくくなったのも事実。

 2000年から4年間は番組の総合演出、以降は番組のプロデューサーを務めるTBSの片山剛氏は「レコード」という言葉に「記録」という意味を見いだす。

 「レコ大というのは、その年その年の記録だと解釈しています。その年に、どのような曲が存在し、流行り、人々に届いたか。(レコード大賞の候補となる)優秀作品賞、新人賞、最優秀歌唱賞…さまざまな観点で選ばれた賞。『今年の音楽はこうだった』と一番お伝えできている番組だと自負しています。その意味で、音楽番組であると同時に、情報番組の側面もあると思っています」

 日本作曲家協会主催の式典を生中継する立場として、最も大事にしているのは受賞者。番組の“出演者”という意識はない。「受賞者の皆さんを称える場として、一番いいステージを用意する」。50年を超える歴史を誇り「ある意味、DNAのように受け継がれてきているもの。大事にするところは変わっていません」。リハーサルも、舞台監督が「受賞おめでとうございます」とアーティストを出迎えて始まる。現場は「おめでとうございます」があいさつ代わりになる。

 音楽の楽しみ方が個人個人でバラバラになり、大きく様変わり。世代ごとに支持される曲は以前にも増して異なるようになった。それでも、レコ大は大賞を1曲だけ選ぶ。

 例えば、昨年の大賞を受賞した7人組「三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE」の「R.Y.U.S.E.I.」(リュウセイ)。受賞前に既に若年層を中心に人気だったが、受賞を機に、幅広く認知され、さらにブレーク。今年に入っても勢いは衰えず、ロングセラーに。「2015年間USEN HITランキング」1位、「DAM年間カラオケリクエストランキング2015」総合部門1位、「Billboard JAPAN HOT 100 of the year 2015」シングル総合部門1位、「レコチョク年間ランキング2015」1位などに輝いた。“レコ大効果”が一因とも言える。

 「世代間に音楽の好みの格差がある時代だからこそ、若い人に人気の曲がレコ大に選ばれれば、年配の人が知ることに。年配の人に人気の曲が選ばれれば、若い人が知ることになります」と片山プロデューサー。個人個人がイヤホンというクローズな場所で聴いている曲がオープンな場所に出ることで、バラバラの世代を束ね「音楽業界を活性化させることにつながると思います」とCD不況下だからこそのレコ大の意義を強調した。

 全盛期の1970~80年代には30~40%を誇った平均視聴率も、2005年には歴代最低の10・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に落ち込んだ。「先輩たちが積み上げてきたものを、自分たちの代で衰退させるわけにはいかない」と危機感。以後「誰もが知る曲を伝える」→「今年の記録を伝える」と意識が代わり、そこから「気持ちが楽になったと思います」と振り返る。近年は12年16・6%、13年17・6%、14年15・6%と盛り返している。

 今年が第57回。「70回、100回と、次の世代に渡していかないといけない。すごく責任を感じます。いい状態でバトンを渡してあげないといけない。駅伝選手の気持ちです。1つの番組を作っているというより、日本の文化が綿々と受け継がれていくのを、お手伝いさせていただいている気持ち。毎年、厳粛、神聖な気持ちになります」と30日の本番を迎える。

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