古舘氏「報ステ」降板 04年久米氏からバトン「不自由な12年間」

[ 2015年12月25日 05:30 ]

ストロボの光を浴び会見する古舘氏

 テレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスター(61)が24日、東京・六本木の同局で記者懇親会を開き、来年3月31日の放送をもって降板することを発表した。「うっぷんがたまった。娯楽の方(バラエティー番組)で思いっきりしゃべり倒したい」と2004年4月から務めてきた看板番組を離れる理由を語った。番組名はそのまま残り、後任は同局が調整中。前日の23日が年内最後の出演だった。

 突然の発表を受けて、詰めかけた約50人の記者に古舘氏はリラックスした様子で語り始めた。

 「今年の夏ごろ、辞めさせてほしいと申し出た。卒業という都合の良い言葉はありますが、もし卒業なら相当留年しているだろう。辞めたいと思って辞めさせていただくのが正直なところ」

 04年、久米宏氏(71)が18年6カ月、キャスターを務めた「ニュースステーション」の後を継ぎ、「報道ステーション」に抜てきされた。その際に、テレビ朝日の早河洋会長と話し合い、「古舘さんが自由に絵を描いてください」と言われたことを明かし、「コロッとだまされた。“自由に”と言った割にはもの凄く不自由な12年間だった」と振り返った。

 23日時点で番組の放送回数は2960回、平均視聴率は13・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、ニュース番組の中でも広く支持を集めてきたが、心の中では?藤があった。

 うっぷんは最近、たまったものではない。「言っていいことと駄目なことの綱渡りだった」とし、「バラエティーだと“ラーメン屋”と言えるが、報道だと“ラーメン店”と言わなくちゃいけない」と具体例を挙げた。頂点に達したのは約2年前。早河氏に「10年を区切りとして、別の挑戦をさせてください」と降板を申し入れたが、「契約があと2年残っている」と慰留された。不満は解消されることなく、今夏にあらためて辞意を伝えると再び説得されたが、折れることはなかった。

 番組では政権与党からの圧力が注目された。今年3月、コメンテーターを務めていた元経済産業省官僚の古賀茂明氏(60)が自身の降板に関し「官邸の皆さんからバッシングを受けてきた」と発言し、同局幹部が自民党の事情聴取を受ける事態に発展。

 その影響を問われると「いざこざがあったことは残念だが、今回の決意とは関係ない」と否定した上で、「権力を監視する役割を報道は担っている。中立公正などあり得ない。偏っていない人などいない。偏らない放送はできない」と自説を展開した。

 番組に寄せられるさまざまな意見を欠かさずに読んでいたことを明かし「誹謗(ひぼう)中傷、非難がいっぱいあった。夕方読んでいてへこんだ」とつらかった胸の内を語った。

 局側が調整している後任に関しては「“報道ステーション”という名前が残る以上は立派な人がやってくれると固く信じている」と真剣な面持ちで語った。

 ◆古舘 伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日生まれの61歳。東京都北区出身。立教大卒業後の77年、テレビ朝日に入社しアナウンサーとなる。入社1年目で担当したプロレス実況で“古舘節”を確立し人気者に。84年6月、フリーに転身。その後はクイズ、歌番組などの司会を務めるなどマルチに活躍。報道ステーションは04年から。

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