「下町ロケット」現場はリアル佃製作所 阿部寛「巡り合えた」当たり役

[ 2015年12月1日 09:55 ]

笑顔でインタビューに答える阿部寛
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 快進撃を続けるTBS「下町ロケット」(日曜後9・00)。第5話で民放連続ドラマの今年度最高平均視聴率20・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した人気をけん引するのが阿部寛(51)だ。部品作りにかける町工場の社長役は、華やかな容姿と一見結びつかないが、自ら「巡り合えた」と表現する当たり役に。そこには内なる「部品」を磨き続けてきた、自身の俳優人生が重なっていた。

 ガウディ計画編に入り、国内産初の心臓人工弁開発に佃製作所は苦戦。五里霧中、妥協の声も上がるが、100%を目指してトライ&エラーを繰り返す。「独自のノウハウは努力からしか生まれない。スマートにやろうとするな。泥くさくやるんだ」。担当者を鼓舞する航平の言葉は不変だ。

 若き阿部も、泥くさくもがいた。「本物を感じたい」と、故高倉健さん主演のNHKドラマ「チロルの挽歌」(92年)に志願して端役で入ったりした。転機は93年。故つかこうへい氏の舞台「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」で主役に抜てきされた。役柄は「元棒高跳び選手のオカマ刑事」。男性とのキスシーンや、卑猥(ひわい)極まるセリフ。要求は日々高まる。「もっと狂え」と怒鳴られた。もうやめたい。そんな気持ちを抑え無我夢中で取り組んだ結果、舞台は好評を博す。反対を押し切り抜てきしたつか氏は「俺たちはかけに勝ったな」と笑った。

 「新聞や雑誌などで、俳優として認めてもらえた。つかさんが裏で“よく書いて”とお願いしてたのは分かるんだけど、そのうれしさはいまだに強く残っています」

 向上心と愚直な努力で手にした成長。「殺し合いのように役と向き合う心構えや、恥をかきながらも容赦なく挑んでいくことを役者の“部品”というのなら、航平や製作所のみんながやっていることと根本的には同じ。熱さがないと、ダメだと思いますね」

 下町ロケット出演にあたり、町工場の経営者を取材した。小数点以下のコストを削り生き残りをかける姿や、体からみなぎってくるプライドの塊に圧倒されたという。

 「下町ロケットは凄くセリフが言いやすい。自分が役者として思っていることと近いから。だから、現場がリアルな佃製作所というか、集団で一つのものに向かっていく感じが今までの出演作以上に強いですね」

 自分が悩んでいたころと同じ年頃の若手が、物語の中での役割をそれぞれ理解し演技している。前半のライバル・帝国重工の財前部長役の吉川晃司(50)や、後半の宿敵となるサヤマ製作所社長・椎名役の小泉孝太郎(37)、天才外科医役の今田耕司(49)ら脇を固めるキャストも熱演。「関わる全ての人間の、生きざまが映るドラマ。全力量をこの現場に出したいと思える。いい作品に、いい年齢で巡り合えました」。たくさんの魂が結集したこのロケットは、どこまで飛んでいくのか。

 ◆阿部 寛(あべ・ひろし)1964年(昭39)6月22日、神奈川県生まれの51歳。俳優デビューは87年の映画「はいからさんが通る」。00年のテレビ朝日ドラマ「TRICK」で演じた三枚目の教授役でブレーク。代表作は06年のフジテレビドラマ「結婚できない男」など。12年の映画「テルマエ・ロマエ」で第36回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などを受賞。08年に結婚。2女をもうける。1メートル89、75キロ。

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