ピース綾部、格差歓迎!又吉の芥川賞は“ビッグクラブ”への第一歩

[ 2015年9月8日 11:00 ]

原稿用紙を前にコンビの未来の構想を練る、ピースの綾部祐二

 歴史的快挙となった、お笑いコンビ「ピース」又吉直樹(35)の芥川賞受賞。芸人初の快挙にフィーバーが過熱する中、相方の綾部祐二(37)は、「格差キャラ」とイジられることに。結成以来苦楽を共にし、「熟女好き」キャラで芸人としては先に脚光を浴びた綾部は今、立ち位置の逆転現象に何を思うのか。芥川賞によって、気になる2人の関係はどうなった!?

 「プラスでしかない出来事。芥川賞作家は何人もいるけど、なにせ“芥川賞作家の相方”は僕しかいないんですから」

 世間が“格差”をあおる。でもその口調は、落ち着き払っている。「率直に言えば、大金が入るのがうらやましい。それだけですよ」と笑い飛ばす。又吉が遠くに行ってしまう嫉妬、?藤などみじんも感じさせない。

 そしてこう言う。「ピースの“ゲームメーカー”として、この展開はやりがいあります」。

 その戦術とは。「僕が格差を縮めていくのもいいだろうし、逆にもっと下がってもいい。今、僕がAV嬢とラブホテル行ったり、熟女との温泉デートを撮られたら超おもしろいでしょ!?それどころじゃねぇだろって」。

 そうは言っても「リーダーシップ取りたがり、センター人間」を自任するほど“自己中心派”。主役を奪われたという思いは本当にないのか。

 「僕からすれば、サッカー選手がクリケットで脚光を浴びたようなもの。お笑いのことならクソーッとなってたかもしれないですが。まして、クリケットの道具を磨いたりしてるのを、そばで見てきたわけですから」 

 結成から12年。楽屋で暇さえあれば本を読んでいる姿や、仕事終わりに睡眠時間を削って執筆部屋に向かう様子は目に焼き付いている。「火花」は「1カ月ちょいかけて読んだ。僕、年間読書量ゼロなんで、描写がうまいとか全く分からない」と、いまひとつピンときていないが、「僕が思う以上に本が好きだったんだなと思うし、努力も見える以上のことをやってたんだなと思う」と、快挙に驚きはない。

 ただ又吉が「賞」を手にしたという事実については自分のことのように目を輝かせる。ピースはこれまでに「賞」を獲ったことがないからだ。

 2010年の「キングオブコント」で僅差の準V。「人生で賞に一番近づいたのがこのとき。十分だよ、とよく言ってもらったけど、準VとVには凄い差があることを知っている」と話す。

 「火花」が三島由紀夫賞を1票差で逃した時、こんな言葉をぶつけた。「獲らなきゃ意味ねぇんだよ。ビジネスになんねぇだろ」――。その真意は「芸人には無数の道があり、大半は先輩が散々歩いた後。“候補”では新しい道を開いたことにならないと思った」。醒(さ)めた商売っ気ではなく“進化したピース”への熱い思いがそこにはあった。

 お互い別のコンビが解散し組んだピース。「あいつも絶対そうだと思うけど“こいつでなければ”とは1ミリも思わなかった。性格も全然違うとよく言われる」。でも、今までにコンビ別れの危機は一度もない。「不思議に、おもしろいと思うことは一緒」。これが異質な2人を固く結ぶ。

 結成のきっかけは又吉の携帯電話についていた京都・知恩院のストラップ。綾部が京都で一番好きな寺だったことから又吉に話しかけ意気投合。今でも綾部が「巳(へび)」、又吉が「申(さる)」と、互いの干支(えと)をあしらった同寺のストラップを持っている。

 結成間もない頃の話をしてくれた。「僕、恵比寿ガーデンプレイス(東京)が好きで。展望台にあいつを連れて行った。無数の街明かりの中“今ここに飛び込んだら、明石家さんまやダウンタウンを知らない人はいない。俺らもそうなるんだ。こっから、伝説の始まりだ”と言った。そのときあいつは“やっべぇ…”と。恐怖を覚えたらしいです」。正反対な性格がにじむ。でも、結局2人は絶妙の息で、売れっ子への道をたどることに。「ウチはいい意味で、個人プレーの融合。サッカーで言えば、完全なるクラブチームなんです」。 

 国も、プレースタイルも違う選手が集うクラブチーム。関西の強豪・北陽(現関大北陽)高でサッカー部に所属しインターハイ出場経験もある又吉は、当時見せた左サイドバックでの粘り強いディフェンスとは異なり「訳わかんないとこからシュート打つ」異色の芸風。一方の綾部は「ガツガツ前に出ていく」猪突猛進型。「華麗なパス回しとは無縁な感じですね」。

 ある程度の強豪に育ったところで、又吉が頭一つ抜けた。これがチームを乱すか高めるか。綾部の頭には後者しかない。

 「お互い違うところで活動をしつつ、これで僕が演技の新人賞、とかなったら、とんでもないコンビでしょ。格差なんてあっていいし、自分がそこを埋めていければ」

 お互いに、ソロ活動に軸足を置く結果にはならないか。「そうなったらそうなったでいいと思うけど、僕が思うのは、メッシとネイマール、かっこいいじゃないですか」とFCバルセロナの二大巨頭の名を挙げる。

 「国でもクラブでも飛び抜けている人が一緒にやるのが一番楽しい。僕らもそんな存在に憧れる。僕らはまだまだ個人プレーですが、結果的に“ピースという国旗”を掲げられるようになるのがベストですね」。又吉の決めた芥川賞というスーパーゴールを、名司令塔がさらに輝かせる。

 ◆綾部 祐二(あやべ・ゆうじ)1977年(昭52)12月13日、茨城県生まれの37歳。高校卒業後、工場勤務などを経て吉本興業の養成所入り。吉本芸人による「男前ランキング」で12年から3年連続1位になり殿堂入り。「熟女好き」キャラで知られ、12年には一部週刊誌で藤田紀子との30歳差交際が報じられた。

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