あれから20年 遠藤久美子 “エンクミ”超えに挑む「役のイメージ強い女優に」

[ 2015年8月25日 10:55 ]

“エンクミ”超えに挑む遠藤久美子

 1990年代に“エンクミ”の愛称でバラエティー番組を中心に人気を博した、遠藤久美子(37)。2011年に約16年間所属した事務所を離れて、長澤まさみ(28)らが所属する事務所に移籍。今では女優としてテレビドラマや舞台で活躍中だ。95年に放映されたマクドナルドのCMに出演したことから、人気に火がついたが、当時は17歳の現役高校生だった。

 「自分自身を“エンクミ”と呼んだことはないので、ブレークの実感はあまりなかった」と当時を回想する遠藤。仕事先での思わぬ反応でブームを実感することになる。「番組で共演してくださる方が、すでに“エンクミ”として私のことを知ってくれていたので、会うのは初めてなのに、親しみやすく接していただけた。テレビで観ている方たちが先に自分のことを知ってくれているのは嬉しかったですね」。

 1本のCMで生活は一変した。当時は現役の県立高校生。横一列が好まれる学校という狭い世界では、目立つ生徒は何かと注目の的になる。それが売れっ子タレントならば、なおさら。「同じクラスの友達は普通に接してくれたけれど、学校って上下関係が厳しいじゃないですか。3時間目から授業を抜け出して仕事に行くことも多かった。そういった部分で先輩から“鼻につくヤツだ”と思われたこともあった」。毎日が平凡な高校生にとっては、別世界で輝いて見える存在は必ずと言っていいほど嫉妬される。

 ただ、羽ばたこうとする人間には、これも必ず味方になってくれる人が現れる。遠藤の味方になってくれたのが、当時の担任教師。バスケットボールの推薦で入学した遠藤は、面接試験の際に「将来は女優になりたい」との夢を口にしていた。面接担当者は、その担任の先生でもあった。「先生は“そういえばあの時から言っていたわね”と、仕事に対して融通をきかせてくれました。夜遅くまでの仕事で疲れて授業中に居眠りしてしまった時も、私の状況を察してくれて、そっとしておいてくれた」。

 恩師ともいえる先生とは、今では飲み友達。「学生時代は生徒と教師ですから“口うるさいな”と思っていた部分もあった。でも今の年齢になってみると、先生の支えの大きさを実感します。芸能の仕事に協力的でなかったとしたら、“エンクミ”は生まれていなかったかもしれないし、先生がいてくれたからこそ、今の私がある。この間会った時に“こんな小生意気な生徒でよく我慢したね。先生、偉かったね”と労ったら“あんたに言われたくないよ”と叱られましたけど」。言葉とは裏腹に、夢をかなえた遠藤を一番誇らしく思っているのだろう。

 早いもので、“エンクミ”も今年で芸能生活20年。女優になりたい、という思いは消えず、4年前に前事務所を退社。半年、フリーの時代があった。「自分で名刺を作って、打ち合わせをして、仕事の内容を詰めて、仕事が終わった後に請求書を出して。自分のことを金額化するわけですから、特にお金の話は苦労しました。これまで知らなったマネジャーやプロダクションの大変さを、身をもって知りました」。日の当たる場所ばかりにいたら分からなかった陰の部分。女優としてというよりも、人間として成長した時期でもあった。

 縁あって12年に東宝芸能に移籍。女優業も着実で、9月4日から東京・明治座で公演される人気作家・有川浩原作の舞台「三匹のおっさん」に出演する。「バラエティー出身なので、私にはまだ女優イメージは薄いかもしれないけれど、松平健さんらベテラン勢の中でお芝居できるのは、今後の宝になるはず」と期待しながら「演じた役柄が自分に馴染んで、その役として世間の人々が認めてくれるような女優になりたいです。バラエティー時代は“エンクミ”だったけれど、いつかは自分の名前すら出てこないくらい役のイメージが強い代表作が欲しい」と力を込める。

 タレントとしての才能を開花させてくれた前事務所社長の「いい事務所に入れてよかった」という言葉を人づてに聞いて、心底嬉しかったという。芸歴は20年だが、女優業に本腰を入れて3年目。果たして、過去の“エンクミ”を超えることができるのだろうか。夢を叶えるための再スタートで、遠藤はそれを証明する。(石井 隼人)

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