ピース又吉 芥川賞受賞の快挙「何も考えずに…」無欲の栄冠

[ 2015年7月16日 19:24 ]

小説「火花」で芥川賞を受賞したピースの又吉直樹

 第153回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれた。芥川賞はお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹(35)の中編小説「火花」(「文学界」2月号)に決まった。1935年の創設から80年の歴史を誇り、過去にはロックミュージシャンの辻仁成(55)が96年「海峡の光」、パンクロッカーの町田康(53)が2000年「きれぎれ」で受賞したが、お笑い芸人として初の快挙を成し遂げた。羽田圭介氏(29)の「スクラップ・アンド・ビルド」と同時受賞となった。

 又吉が中学時代、読書にハマるきっかけになったのが、教科書に載っていた芥川龍之介「トロッコ」。読書好きになった原点といえる作家の名を冠した賞を獲得した。スポニチ本紙のインタビューに「そこ(芥川賞)は何も考えずに書きました…」という又吉だったが“無欲の勝利”で栄冠を手にした。

 「火花」は、売れない芸人と先輩の交流を通し「才能とは」「人間とは」などの葛藤を描いた意欲作。又吉は太宰治が好きで「人間失格」は自分のことと思えたほど。これまでエッセーや短編を手掛けてきたが、原点となった純文学に本気で向き合ったのは初。昨年9月から3カ月かけて原稿用紙230枚分を仕上げた。

 文芸誌「文学界」2月号で掲載されると、創刊82年の同誌が史上初の増刷となって話題に。3月に発売された単行本は今年上半期のベストセラーランキングで2位(日本出版販売調べ)となった。

 内容や文体への評価も高く、純文学作家の登竜門とされる「第28回三島由紀夫賞」の候補になり、5月の選考会では受賞作「私の恋人」(上田岳弘氏)との決選投票の末、1票差で受賞を逃した。

 この日は選考会を前に、都内で行われた遊園地のPR会見に出席。「リアルに考えれば無理やろうけれど、せっかくやから期待したい」「地元の小・中学校が垂れ幕を用意していると聞いて、アカンかった時は申し訳ないなと思う。(受賞したら)まあ、自然と喜べるんじゃないでしょうか」などと心境を語っていた。

 贈呈式は8月下旬、東京都内で開かれる。賞金は100万円。

 なお、直木賞は東山彰良氏(46)の「流(りゅう)」に決まった。

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