「天皇の料理番」支える森下脚本の魅力「しんしんと染み渡るセリフ」

[ 2015年6月7日 09:00 ]

TBS「天皇の料理番」の脚本を担当する森下佳子氏

 「今クールNo.1」の呼び声も高いTBSテレビ60周年特別企画・日曜劇場「天皇の料理番」(日曜後9・00)を支えるのが、脚本を務める森下佳子(よしこ)氏。ヒットメーカー・石丸彰彦プロデューサーと「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「Mr.BRAIN」「JIN―仁―」「とんび」などでゴールデンコンビを組んできた。石丸プロデューサーは森下氏を「同志」と語り、その魅力は「セリフ」だと評した。

 2013年後期のNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で同年(第32回)の向田邦子賞、14年(第22回)の橋田賞に輝いた森下氏。その魅力を問うと、石丸プロデューサーは間髪入れずに「セリフです」と答えた。

 「脚本家の一番の魅力はセリフだと思います。構成はプロデューサーでも直せるところがありますが、森下さんの醸し出すセリフは100年かかっても僕には出てきません。登場人物が10人いるとしたら、脚本家は10人分の心臓を持たないといけないわけじゃないですか。彼女は、それができるんです」

 特徴的なワンフレーズがあるかというと、石丸プロデューサーは首を振った。

 「そこが森下さんのすごさなんですよ。『このひと言がすごい』ということではなく、物語を積み上げた上でのセリフの妙なわけです。あざといセリフが急に来るということではなく、しんしんと染み渡るセリフを描くのがすごい。書いていって書いていって、読んでいって読んでいって出たひと言は、心のひだに触れます」

 最初にタッグを組んだのはTBS「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年7月クール)。当時、森下氏は同局「中居正広の金曜日のスマたちへ」の再現ドラマの脚本を手掛けるなどしており「ひょんなことから出会ったんですよね。この人で勝負したいと思ったんです」と“セカチュー”に抜擢した。

 なぜ森下氏だったのか。「好きなものへの感覚が一緒なんだと思います。例えば『どんな青が好きか』ということでも、100人いれば、なかなか同じ青にならないと思うんです。それが森下さんと演出の平川(雄一朗氏)と僕の3人が同じ色だったと思うんですよね。本当に偶然。僕はそんな人と出会えてラッキーだったと思います」

 森下氏とタッグを組み、10年。今や本打ち(脚本の打ち合わせ)で、森下氏が「本当はこう書きたかったんじゃない?」と分かるほどの、あうんの呼吸。「自分のプロデューサー人生にとって、同志なので。森下佳子と積み上げてきたプロデューサー人生だと思っていますから。あの人がいなければ、僕は成立しないと思います」と感謝した。

 大正~昭和の史実に基づき、日本一のコックを夢見て福井から上京した青年・秋山篤蔵(佐藤健)の成長を描く人間ドラマ。7日は第7話。篤蔵はパリの地に立ち、大使館の粟野(郷ひろみ)を訪れる。

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2015年6月7日のニュース