父親・中尾明慶 役者として葛藤中「10年後を笑顔で迎えられない」

[ 2015年5月25日 10:43 ]

俳優としての新境地開拓を目指す中尾明慶

 訪問美容をテーマにした映画「鏡の中の笑顔たち」(5月30日全国公開)に出演している、俳優の中尾明慶(26)。大ヒットテレビドラマ「ROOKIES」以来、不良っぽい役が似合う俳優と評されることに「良くも悪くも自分にはそのイメージがついてしまっている」と、胸の内を告白する。イメージチェンジも選択肢の一つ。その活力となっているのが、今年2歳になる息子の存在だ。

 「家族で食事をしている時が一番幸せ。それと同時に、背負ったものの大きさに気づかされて不安になることもある。この幸せをブレることなく、維持していくにはどうしたらいいのかって。家が楽しければ楽しいほど、その不安は募る」。守るべき人の存在が現状に満足することを許さず、言葉の端々から決意が滲む。

 自分の中でリミットも設定している。「30歳までに何かしらのステップアップをしないと、俺は10年後を笑顔で迎えられないのでは?と本気で思う」。父親になったからこそわき上る、新たな感情との葛藤も生まれた。「台本のセリフ一つを取っても、結婚する前と後では捉え方がだいぶ違う。例えば子供が不幸になるようなシーン。子供がいなかったら、こんなに苦しい感情にはならないだろうと思うこともある。そんな時に自分の心の変化に驚かされる」。これまで演技と割り切っていたところに、父親としての特有の感情が頭をもたげるのだ。

 こんなことがあった。凶悪殺人犯を演じた時のこと。「役者としての引き出しを増やすために必要な役柄だと思う一方で、今はいいけれど、子供が成長して学校で“お前の父親、殺人犯だったな”なんて言われて、いじめられたらどうしようとも考えてしまう。かといってヒーローばかりできるわけでもないし。選り好みしていたら仕事だってなくなる可能性もあるから」。

 役者としての引き出しを増やすために「とんでもない凶悪な役どころもやってみたい」との本音がある一方で、父親役を演じたいと思う自分もいる。「揺れまくっている」と苦笑する中尾だが、俳優としてさらに大きく成長するために必要な苦しみの真っただ中にいるのは間違いなさそうだ。

 子供が生まれる前は「俺が父親になる」という意識だった。ところが今では「息子が俺を父親にしてくれている」と感じている。「息子から“パパ!”って起こされたりすると“おお……”ってなる。俺なんか父親としてまだまだだと思っていたけれど、ほんの些細な瞬間に、子供が自分を父親にしてくれる」と唯一無二の存在に感謝する。

 妻が仕事で多忙な日は「家事は一通りやって、嫁が帰って来ても何もやらなくていい状況を作る。そうすれば奥さんも幸せを感じるでしょ?主婦って本当に大変。僕も一日家事と子供の面倒を見ただけで、体がバッキバキになったから」と見事なまでのサポートぶり。仕事終えて、オムツを買いに行くこともしばしば。「イクメンアワードとか、もらえませんかねぇ」。冗談めかすが、そのような賞を受賞すれば一つの願いでもある父親役が殺到して、イメージチェンジのきっかけになるかもしれない。人間、何が幸運をもたらすか分からないから。(石井 隼人)

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2015年5月25日のニュース