佐藤健 「剣心」超えへ妥協なき挑戦 料理シーンも吹き替えなし

[ 2015年4月28日 07:20 ]

サラサラヘアをバッサリ。爽やかな笑顔を見せる佐藤健

 26日にスタートしたTBS日曜劇場「天皇の料理番」(日曜後9・00)で主人公を演じる佐藤健(26)。昨年は、主演のアクション映画「るろうに剣心」が大ヒット。同世代の俳優の中でも、ひときわ存在感を放っている。俳優デビュー10年目で挑む注目のドラマに「僕の代表作のひとつになる」と全身全霊で臨んでいる。

 サラサラヘアをバッサリ。野球少年だった中学生以来、昨年12月に約1センチの長さに切った。短い髪のシーンはすでに撮り終えたため、「今はもう伸ばしてるんですけどね」とちょっぴり照れくさそうに頭に手を当てた。男性から見ても、ほれぼれするほど似合っていて、このままでいいじゃん!と言いたくなるぐらい。役柄にピッタリはまっている。

 新たなビジュアルで臨む「天皇の料理番」で演じるのは、明治時代に料理に魅せられて福井から上京した青年・秋山篤蔵。周囲の人々に支えられ、愛されながら、料理人の夢に向かって突き進む。最後には、昭和天皇の料理を任される日本一のコックへと上り詰めていく。

 描かれるテーマのひとつが、人生における「ターニングポイント」。秋山が料理人を目指すきっかけは、「一口のカツレツ」だった。初めて食べたカツレツの味に魅了されて、「俺は日本一のコックになる」と決意。まさに転機だ。

 自身のターニングポイントは、高2のゴールデンウイーク。暮らしていた埼玉から初めて原宿を訪れたときのこと。「男友達と2人でビビリながら竹下通りを歩いていたら、男女2人組がやって来て名刺を渡されたんです」。現在の所属事務所アミューズのスカウトだった。

 最初の印象は「“男にもスカウトってあるんだ”だった」と笑う。そりゃ、こんなイケメンがいればスカウトマンも目が輝くだろう。「芸能事務所とか全然知らなかったんですけど、なぜかアミューズという名前だけ知ってたんです。“あっ、知ってます”と連絡先を交換しました」。これが始まり。06年に俳優デビューし、今年10年目の節目を迎えた。

 「俳優に興味はありましたけど、将来何がしたいとか、そんな夢はなかった」。それだけに、現在の活躍に「僕はラッキー。好きなことをやって生活ができている。それが一番ありがたい」と語る。

 感謝の気持ちの大きさだけ仕事に全力投球だ。「男たるもの、仕事をするなら戦わなければならない。戦うんだったら一番を目指さなきゃならない。自分にとっては、俳優の世界で一番になるしかない」。日本一のコックを目指した秋山と同じく頂上に立つことが目標だ。

 昨年は「るろうに剣心」が2作で興行収入95億円の大ヒット。しかし、「ハリウッド映画を見ると悔しいと感じる」とまだまだ満足はしていない。「誰もやらない、新しいことをどんどんやっていきたい。“剣心だけやっていればいいじゃん”と思われたら悲しいですから。今回は早速それ以上の役に出合えたと思う」と手応えを感じているようだ。

 当たり役だった「剣心」を超えるため、役作りに妥協はない。特に料理だ。「包丁も握ったことがない」という素人だったため、猛特訓を積んだ。昨年8月から料理学校に通い、自宅に段ボールでタマネギやジャガイモを置き、時間があれば切る、切る、切る。

 映画の撮影で北海道に滞在した際も、ホテルの部屋で包丁を握っていた。今では「野菜を見ると切りたい衝動にかられる」というほどだ。

 「指も結構切りました」と体当たりで挑み、手先だけのシーンでも料理のプロに代役を頼むことはなかった。「そもそも撮影現場に(手の)代わりの人が用意されていなかった」と苦笑するが、それも制作側が全幅の信頼を寄せていればこそ、正真正銘、佐藤が全ての料理を作った。料理のNGは一度もなし。

 NHKの大河ドラマのような、一人の男の伝記的な成長物語。だが佐藤は「篤蔵さんのサクセスストーリーが見どころじゃない」と強調。「夢に向かって突き進む姿よりも、篤蔵さんを支える周りの人間たちの愛の物語だと思ってます」。撮影現場では、共演の佐藤蛾次郎(70)が、毎日栄養ドリンクを差し出すほど、佐藤も愛されている。

 今作はTBSテレビの放送60周年特別企画。1クールの連ドラには珍しく、昨年12月から半年かけて撮影。パリでのロケも行われた。「確かにプレッシャーはある」。だがそれ以上に、作品に打ち込める理由がある。「通常はどこかで妥協点を見つけながらやっていかざるを得ない。でも今回はワンシーン、ワンカット、全て妥協したところはない」と胸を張る。

 「剣心」から「篤蔵」へ。これも新たなターニングポイントに違いない。そう聞くと、「常に大事な時ってことですよ」とサラリ。冗舌ではないが、ひとつひとつの質問に背筋をただし、真っ正面から受け止めようとする。「真面目ですよね」と声をかけると、目の色が変わった。

 「真面目っていうと、ちゃんとした人に思われがちだけど、“真面目”と“負けず嫌い”と“見えっ張り”は同意義だと思う。見られるのは自分だし、返ってくるのも自分ですから」

 なるほど。真面目の裏には、負けたくない、目立ちたい思いがあるのだろう。その気持ちが失われなければ、いつか「日本一」と呼ばれる日が来るに違いない。

 ◆佐藤 健(さとう・たける)1989年(平元)3月21日、埼玉県生まれの26歳。06年にデビュー。07年の「仮面ライダー電王」で連ドラ初主演。ドラマ「ROOKIES」、NHK大河「龍馬伝」などに出演。今年は「バクマン。」、「世界から猫が消えたなら」の主演映画2作の公開が控える。特技はブレークダンス。1メートル70、血液型A。

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