人気芸人が本人役ドラマの理由 単発作ゆえの2つの“仕掛け”

[ 2015年4月17日 08:00 ]

人気芸人8人が本人役で出演する異色のサスペンス「容疑者は8人の人気芸人」

 8人の人気芸人が本人役を演じ、容疑者となる異色のサスペンス「容疑者は8人の人気芸人」(フジテレビ)が18日午後9時から放送される。「逃走中」シリーズなど数々の人気バラエティー番組を生んだフジテレビの高瀬敦也プロデューサーによる初のドラマ作品。恐妻家で知られる「雨上がり決死隊」の宮迫博之(45)が劇中は愛妻家という設定など、現実とフィクションの境界線も楽しめる。人気芸人が本人役の理由、意図は…。斬新な企画の発想の裏には、ヒットメーカー・高瀬氏ならではの“視点”があった。

 
 容疑者たちと同じく本人役の「バナナマン」日村勇紀(42)の命が狙われる事件が発生。日村は1人で“秘密基地”から配信しているインターネット動画「日村ちゃんねる」で「大脱出シリーズ」第3弾に臨んでいたが、その身に突如、危険が迫る。日村の命は残り9時間30分。容疑者は、日村と直前までテレビ番組の収録で一緒だった人気芸人8人(宮迫博之、博多大吉、 設楽統、バカリズム、伊達みきお、徳井義実、いとうあさこ、若林正恭)。犯人は誰なのか…。カンニング竹山(43)演じる黒田刑事が事件を追う。

 高瀬氏は1998年入社。スポット営業部5年、編成部11年を経て、昨年7月に現在のドラマ制作センターに異動した。編成部時代は「世界行ってみたらホントはこんなトコだった!?」「ヌメロン」「有吉の夏休み」などオリジナリティーあふれるバラエティー番組を企画。「金色のガッシュベル!!」「ハチミチとクローバー」「のだめカンタービレ」「図書館戦争」などのアニメもプロデュースした。

 異動後、すぐに数十本の企画書を書き上げた。そして決まったのが今回の“変化球”作品。「今のドラマセンターにないタイプの作品で、かつ、自分が役に立つには、と考えたら、こういう企画になりました」。一番最初に考えた企画だった。

 人気芸人が本人役。その発想はどこから生まれたのか。「単発ドラマは『見る動機をいかに作れるか』『視聴者の皆さんをいかに早く楽しませるか』、この2点が大事だと思います」。連続ドラマやレギュラーのバラエティー番組と比べると、単発ドラマはより一層、見る理由付けが必要と分析し“仕掛け”を施した。

 視聴動機。「タイトルにどれだけ“ひき”があるかがポイントです。見る側からすれば、どんなものが見られるのか、ひと言で想像できるタイトルであることが大事。今回の企画も『何かおもしろそう』『何か起きそう』という印象を持っていただけるように心掛けました」

 作品に引き込むスピード感。「ドラマは登場人物のキャラクターを説明するところから始まります。見る側は、登場人物の人となりが分かってから、感情移入し始めます。それだけにキャラクターの説明には時間をかけて、丁寧に描く必要があるのですが、これが、普段テレビに出ている芸人さんの本人役なら、視聴者の皆さんが「宮迫さんって、こういう人だよね」と分かった状態からスタートできます。キャラクターが分かっているので、感情移入の“立ち上がり”がすごく早い。真実は恐妻家でも愛妻家でもいいんです。恐妻家キャラをよくテレビで見る宮迫さんという出方であればいい。『私が思っていたのとは違うけど、ありそう』と視聴者の方々が思っていただければ、その瞬間に感情は入っていくので。普通の2時間ドラマで、メーンキャストが8人ということはまず、あり得ません。登場人物を追えませんし、キャラクターの説明だけで2時間の番組が終わってしまいます。でも、今回は“誰が犯人なのか当てクイズ”として見てもらう企画の性質上、8人前後の主役は必要でした。そういう意味でも本人役であることは必然でした」と本人役の方法論、その効果を語った。

 ただ、企画の後は「超大変でした」と振り返る。起用した芸人は全員が多忙を極める。「この8人で自由に作れるスケジュールにならないことは容易に想像できたので、設定を容疑者にしました。8人が刑事仲間だとしたら全員が揃っていることが当たり前ですが、そんなシーンをたくさん作ることは不可能。でも、容疑者にすれば、むしろ全員揃うことが不自然なので、バラバラに撮っていける」。それでも“パズル”はなかなか組み合わず「当然その人ありきの役を考えるのですが、制作の進行上、キャスティングを進めながら脚本を作ることになりました。しかし、その人のスケジュールが取れない。役ごと変えることもありました。作っちゃ壊し、作っちゃ壊し。脚本家も苦悶、スケジュール担当のスタッフも苦悶。みんな、二度とやりたくないと言っています」と苦笑いした。

 「僕の思いつきに結果的にいろいろな方を散々振り回すことになり、申し訳なかったです。本当に頭が下がる思いです」とキャスト、スタッフに感謝。「仮に、どれほど内容がよいものだったとしても、見ていただかないと意味がありません」。そのための斬新な企画と撮影の苦労。テレビマンの切なる思いが詰まっている。

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2015年4月17日のニュース