ジミー・ペイジ「80歳になってもステージで演奏していたい」

[ 2014年10月21日 13:11 ]

1972年以来に日本武道館を訪れたジミー・ペイジ

 ジミー・ペイジ(70)ほど憧れのギタリストはいない。エレキギターを手にした日から、レッド・ツェッペリン時代の名フレーズの数々を何回まねてみただろう。同じようなファンは世界中に何万人もいるはずだ。日本武道館での初来日公演から43年。なぜ、いまだにハードロック史上最高の伝説として語り継がれるのか。古希を迎えたレジェンドが自ら解き明かす。

 96年に成田空港で直撃取材した際の写真を見せると、驚きの声を上げて逆質問してきた。

 「ワ~ォッ!貴重な写真だね。君も子供みたいだ。この時、何歳?」

 ――28歳か29歳。今のペイジさんも70歳にはとても見えないですよ

 「頭髪の色は変わったな。ただ、誤解しないで。実際はこの写真のように黒くて、今は白く染めているんだ。染料をボトル1本分使っちゃうから大変なんだよ、ハハハ」

 想定外のギャグ。それでも激太りとやゆされた90年代の面影はない。精悍(せいかん)な顔つきに戻り、背筋が張って姿勢がいい。身長1メートル80。面と向かうと今も迫力がある。

 ――若さを保つ秘訣(ひけつ)は?

 「人生をエンジョイすることだよ。それとね、酒を断ったんだ。飲まなくなって15年になる」

 ――71年初来日した時の思い出は?

 「日本の観客は真摯(しんし)に演奏を聴いてくれた。米国人は違う。酔っぱらったり興奮しながら聴くから、こちらもワインを飲んで演奏した。日本人はじっくり耳を傾けてくれるから演奏者同士は、いい緊張感で掛け合い、素晴らしい演奏ができた。だから感謝しているんだ」

 ――1曲目は「移民の歌」(70年)でしたね

 「ロバート・プラントの、物凄い雄叫びから始まる。あの叫びで、いきなり圧倒してやろうと選んだ」

 ――会場だった日本武道館は今月で完成50年を迎えたんですよ

 「ロンドンのロイヤル・アルバート・ホール、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンとともに憧れの場所だった。あの舞台に立てただけで幸せさ。それ以前から日本に凄く興味を持っていたし。映画の“七人の侍”、能や木彫り工芸など伝統文化の質の高さ、三島由紀夫の文学も大好きだった」

 ――20年ぶりにオリジナルアルバムのリマスタリングに関わり、その旧譜の発売ラッシュが6月から続いています。過去の自分と向き合って今、感じることは?

 「やっぱりツェッペリンは凄いバンドだね」

 ――数多くのバンドの中で、なぜ特別になり得たのでしょうか?

 「大手レコード会社(アトランティック)と契約をしたのに、制約にとらわれず自由に演奏させてもらえたからだろう」

 ――具体的には?

 「それまで所属していたヤードバーズでは自分らしい演奏をさせてもらえなかった。ドラムスのジョン・ボーナムも同じだ。あの筋骨隆々の体形を思う存分発揮できる叩き方はツェッペリンで、やっとできたんじゃないか。ポール・マッカートニーと一緒にやった時もボーナムらしさは出せなかった。4人が持てる才能を目いっぱいぶつけ合えた。シングル向けとか、売れ線の作品を作れとか無理強いはされなかった」

 ――初期のアルバム4作にはタイトルらしいタイトルがありませんね

 「最初から3枚は“1”“2”“3”と決まっていた。4作目から、このままではいいのか、と考え始めた」

 ――5作目でついに「聖なる館」のタイトルが付きました

 「“聖なる館”というタイトルの曲もできたけど次のアルバムに収録した。これって本来変だよね。こんなおかしなことはできるのか、って。それでも平気やってしまえたのがツェッペリンさ」

 ――43年前の日本公演を見た多くの人は現在60~70代になっています。まだ社会で働いている人たちもいます。

 「うそだろう…みんな、そんなに年をとってしまったのかい?」

 ――(…)

 「あの頃、日本は高度経済成長中で、凄いスピードで未来に向かって突っ走っていた。あの空気の中で演奏ができたことは大変光栄なことだ。僕たちが今でも、皆さんの思い出の一つになってもらえているなら、凄くうれしいよ」

 ――東京は6年後に五輪を控えています

 「僕の母国では2年前にロンドンで開催され、街中が大きく変貌した。東京も建築などが目まぐるしく変わるだろうね」

 ――2020年には何をしていると思います?

 「80歳でも舞台に立っているクラシックギタリストがいるんだ。僕も同じように80歳になってもステージで演奏していたいね」

 ――その時はぜひ、レッド・ツェッペリンで。ぜひ再結成してください

 「何言っちゃってるんだい。その質問はロバート・プラントにぶつけてくれよ。なかなか彼が“やろうよ”と言わないから僕はこうだよ…」

 そう言って右手で枕の形をつくり、昼寝をするしぐさを見せた。

 ――来日する度に西新宿などの海賊版店で見かけたとの情報が寄せられます。何か新たな発見があるんですか?

 「いい質問だ。実はまた凄い盤を探し当てたんだ。“フィジカル・グラフィティ”と“イン・スルー・ジ・アウト・ドア”の白盤さ。貴重だろ」

 ――自分の作品のサンプル盤じゃないですか

 「持ってきたお金は使い切っちゃったよ。今、独身でよかった。妻がいたら“なんで、こんなものに大金をはたくの”って大目玉さ。怒る人がいなくて良かったなぁ~」
 次回の来日時は、空港ではなく海賊版店に張り込もう…。

 ▼レッド・ツェッペリン ボーカルのロバート・プラント(66)、ベースのジョン・ポール・ジョーンズ(68)、ドラムスのジョン・ボーナム(享年32)との4人で68年デビュー。ブルースを基調とした重厚なバンドサウンドでロック界をリード。「ブラック・ドッグ」「ロックン・ロール」「天国への階段」などを収めた71年の「レッド・ツェッペリン4」は米国で史上3番目に売れたアルバムに。80年、ボーナム急死で解散。アルバムの総売り上げ枚数は3億枚。今年6月には「1」「2」「3」、今月29日には「4」「聖なる館」が新装発売(各2000円)。2枚組のデラックス・エディション(各2800円)にはそれぞれ未発表バージョンを収録。アナログ盤などを加えたスーパー・デラックス・エディション(各2万円)も発売。

 ◆ジミー・ペイジ 1944年1月9日、英ミドルセックス州生まれ。63年頃からセッション活動を開始。同じくヤードバーズに所属したエリック・クラプトン(69)、ジェフ・ベック(70)とともに三大ギタリストと呼ばれる。結婚、離婚歴は少なくとも2度。

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