妻夫木聡 主演映画舞台バンクーバーで初上映、温かい拍手に涙

[ 2014年10月1日 05:30 ]

カナダ・バンクーバー国際映画祭で行われた、映画「バンクーバーの朝日」ワールドプレミアに出席した(左から)石井裕也監督、ケイ上西功一氏、妻夫木聡

 妻夫木聡(33)が主演した映画「バンクーバーの朝日」(監督石井裕也、12月20日公開)が29日夜(日本時間30日)、カナダで開催中の「第33回バンクーバー国際映画祭」の特別招待作品として上映された。バンクーバー市に実在した、日系移民による野球チームの物語。日系人ファンらの温かい拍手に、妻夫木は「生きてて良かった。自分の作品にここまでパワーをもらうとは」と涙を流した。

 見上げるような3階席まで埋め尽くした1800人の拍手が鳴り響いた。エンドロールの最中に客席前方にできた人だかりの中心で、朝日軍の主将役の妻夫木が目を潤ませた。自身が一塁へ全力疾走する場面で起きた、温かい応援のような笑い声がきっかけだという。「聞いた瞬間に涙が出た」と、上映中から泣いていたことを明かした。

 この日がワールドプレミア。バンクーバー市最大規模の映画館「ザ・センター・イン・バンクーバー・フォア・ザ・パフォーミング・アーツ」での上映は、「バンクーバー朝日軍」が映画の題材だからこそ意味がある。上映前の客席に「I’m glad to be here(ここにいられてうれしい)。皆さんに最初に見てもらえるのを楽しみにしていた」とあいさつした。

 朝日軍は人種差別の激しい戦前のカナダで、白人との体格差を逆手に取るスピーディーな“サムライ野球”で快進撃。フェアプレー精神を重んじる姿は日系人の誇りとなり、やがて人種の壁を越えた人気チームに。同市は、今も人口の約半分がアジア系移民で、日系人も多い。現地紙「バンクーバー新報」記者で、94年に移住した西川桂子さんは「多くの人が映画を誇らしく思うのでは」と市民の思いを代弁した。

 投手役の「KAT―TUN」亀梨和也(28)が「併殺は本当に成立しないと、監督がOKしなかった」と明かすように、プレー場面にこだわった。一緒に観賞した朝日軍元三塁手のケイ上西功一氏(92)も「当時の朝日のプレーを見せてもらった気分」と太鼓判。客席は、銀幕で盗塁やスクイズが成功するたびに進行中の試合を見るような拍手を送った。妻夫木は「この映画をやって良かった。生きてて良かった…くらいの気持ち。自分の作品に、こんなにパワーをもらったことはない」と充実の表情だった。

 ▼バンクーバー朝日軍 1914年(大3)にバンクーバーで結成された、日系移民2世を中心とした野球チーム。バントや盗塁、ヒットエンドランなどを駆使してカナダ人チームを撃破。西海岸のリーグを総なめにし、白人からも熱狂的な支持を得る。太平洋戦争の開戦に伴い41年、選手らが「敵性外国人」として強制収容所へ送られて解散。03年、移民社会、野球文化への貢献が認められてカナダ野球殿堂入り。近年再び注目が集まっている。

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2014年10月1日のニュース